経営 × オフィス

ジョブズも実践した
職場の閉塞感を改善する方法

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第19回】 2015年2月18日
previous page
2
nextpage

「不機嫌な職場」は決まって
たこつぼ化している

 筆者が、不機嫌な職場関連の取材のために、様々な会社を訪れたとき、問題のある会社は決まって、「たこつぼ」化していた。個々人の仕事場がブースで区切られ、隣に誰がいて、いつ出社しているかさえわからない。物理的に「独りで座って仕事をする」ことを前提として職場がレイアウトされているのだ。

 もちろん、ブースで区切っていること自体が悪いわけではない。そういう会社でも創造性を発揮し、業績を上げているところはたくさんある。しかし、筆者が見たところでは、そういう会社は必ず「たこつぼ化」の弊害に気づき、それを取り除くための工夫を意図的に行っている。

 例えば、グーグルでは仕事場のブースのいくつかがチームになって、職場をデコレーションをするコンテストを、世界規模でやっている。一見、単なる遊びに見えるが、これを行うことで、ブースから飛び出し、歩いて相手に会いに行き、話し、お互いの考えを知り合うという機会が生まれるのだ。

 こういった「歩いて人に会いに行く」ことの重要性を理解している職場ほど、創造性や生産性が高いというのは、実際に取材してみて実感で分かった。

 いま、職場で「○○に行くには、いちいち歩いていかなくちゃいけない」という環境にいる人は、実は恵まれている。健康のためにも、メンタルヘルスのためにも、そして仕事の生産性のためにも、座っているより歩いたほうがいいのだ。

 もしそういう環境にいるならば、せめて「いちいち歩いていく」環境をより快適にするように努めてみたらよいだろう。最も自分が気に入ったルートをとる、途中にリラックスできる寄り道先を決め、定期的にそこで小休止する、気持ちのいい人たちと会えるルートを見る、何かいいことが起こった時に歩いていたルートを「ラッキールート」としていつも歩いてみる、などの工夫だ。

カントが行っていたように、リラックスできて同じものがある(でも日々少しずつ違う)というルートが、思考を活性化するのには最も適している。

 そして、ここに挙げたような科学的根拠を参照するまでもなく、その重要性に気づいていた経営者がいる。スティーブ・ジョブズだ。

previous page
2
nextpage

「経営×オフィス」を知る ワークスタイルで変わるオフィスとは?

  • ワークスタイルの変革とオフィスの変化
  • 創造性を育む「クリエイティブ・オフィス」の作り方
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 働き方の多様化が進むほどオフィスの役割は重要になる 新しいワークスタイルとオフィスの進化

OFFICE TOPICS 働く場所・働き方・働く人

「経営×オフィス」を見る 理想のオフィスのつくり方

 

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧