感情に訴えかけるセールスは、
一時的にしか効かない

 購買には、合理的な判断だけでなく、気分などの感情も影響しています。ですから、お客さまの感情を揺さぶって「いいな、欲しいな」という気分に導いていけば、ニーズを喚起できるはずです。

 たとえば、マンションの購入に対する緊急度がそれほど高くないお客さまが、モデルルームを見たとたんに欲しくなってしまうとしたら、それは、感情が動いたからです。

 BtoBビジネスでも、感情に訴えてニーズを訴求することがあります。工場に製作機械を売りたいのなら、新しい機械のデモンストレーションを行ってみる。すると、お客さまは「最新の機械を使うと、こんなに速く、こんなにきれいに仕上がるのか。うちの設備とは違う」と感動を覚えるでしょう。

 このようにお客さまの感情に訴求するセールスは、ここ十数年、確かに成果を上げてきました。ですが、感動するのは「最初だけ」であって、比較購入するようになれば、やがて感動が薄れてくるものです。
(拙著、『トップセールスには、なぜ「いいお客さま」が集まってくるのか?』より)

 モデルルームの演出には、各社とも力を入れていますから、複数のモデルルームを見比べてみると、どれも遜色ないことがわかります。見学を重ねるうちに、「多くの物件が似たり寄ったりの設備・仕様で展示されている」ことに気がつき、感動も、購買意欲も薄れてしまうのです。

 トップセールスたちは、このようにマーケットで何が起こり、そしてお客さまが何を求めているかを常に考えながら、日々のセールスに力を入れているのです。