元防衛大学校教授が
ハンニバルの戦略を分析
本書は、防衛大学校教授として戦略論を教えていた著者が、ハンニバルの戦略をビジネスマン向けにまとめたものです。ハンニバルの評伝はたくさんありますが、戦略論からの考察はそれほど多くはありません。非常にわかりやすく、また希少価値の高い書物だといえるでしょう。
実際の戦闘について、著者は地図を参照しつつくわしく分析します。カンネーの戦いについては、結論としてこうまとめています。
ハンニバルの主要な勝因は次の通りである。
・スペインでの戦略決断と騎兵、兵站の戦略準備
・アルプス越えからイタリア各地での戦闘によるハンニバルと不離一体の精強軍
・イタリアでの主力決戦までの段階的作戦
・騎兵隊動力発揮に有利な戦場の選定と太陽、土地埃の主導的活用
・ローマ軍弱点の背後を決勝点に絞り、騎兵の機動力を主力に活用した創造戦術
・ローマ軍装歩兵の攻撃力を弱卒歩兵で圧迫させ誘致導入
・ローマ軍指揮官ヴァロの功を焦る心理の逆利用
・アルプス越え以来の企図の秘匿・欺偏(180ページ)
カンネーの戦いには勝利したものの、けっきょくカルタゴは内部崩壊し、ローマ軍に本土を攻められ、ハンニバルは黒海で自殺します。両国は講和を結びますが、その後、第3次ポエニ戦争(紀元前149年-紀元前146年)で最終的に破れ、ローマによって滅ぼされます。
ローマの好敵手、スキピオ・アフリカヌスはその前に失脚し、ハンニバルとほぼ同時期に死去していました。