孫子の兵法など、軍事戦略からビジネスの戦略を学ぶという本は多いですよね。今回はその中でも「戦略の父」と言われ、ナポレオンやクラウゼヴィッツにも影響を与えたと言われるハンニバル将軍の戦略を解説した『ハンニバルに学ぶ戦略思考』をご紹介します。歴史や戦略論がお好きな方は必見です。
2000年以上にわたり軍事戦略論の
テキストにされているハンニバル将軍
ハンニバルというと、多くの人は映画「羊たちの沈黙」(1991)のハンニバル・レクターを思い出すでしょう。このハンニバルは連続殺人鬼ですが、高度な知性と教養を備えたサイコパス(精神病質)の医師という設定でした。アンソニー・ホプキンスの怪演でアカデミー賞をいくつも受賞していましたね。名前のハンニバルは明らかにカルタゴの将軍、ハンニバル・バルカ(紀元前247年-紀元前183年)から流用しています。知性と残虐性を表しているのでしょう。
本書のハンニバルは、もちろんハンニバル将軍のことです。カルタゴは紀元前800年ごろに建国された、と現在のチュニジア政府は書いています。地中海をのぞむチュニスに近い海岸の都市国家であり、北部アフリカと地中海西部を支配した経済大国でした。
古代ローマ帝国に比べればカルタゴは小さな国ですが、ローマ帝国連合軍と100年以上にわたり、地中海の覇権をめぐって何度も戦っています。なかでも、第2次ポエニ戦争(紀元前219年-紀元前201年)では、ハンニバルがスペインからアルプスを越えてイタリア本土へ侵入し、共和政ローマの市民を恐怖のどん底に落とします。
紀元前216年のカンネー(カンナエ)の戦いは両軍の大会戦ですが、巧みなハンニバルの戦略でカルタゴ軍が圧勝します。これが有名なハンニバルの「包囲殲滅」戦です。ローマの兵力は8万、カルタゴ軍5万より圧倒的に優勢でしたが、なんとハンニバルは多数の敵を「包囲殲滅」したのです。
どうやったのかって? それは本書を精読してください。
ローマ軍を相手にしたハンニバルの戦略は、その後、2000年のあいだ軍事戦略論の重要なテキストとして各国で教えられているのだそうです。