【2】
「ほどく」作業で、すでにあるモノを棚卸ししよう

「すでにある」技術やモノを転用するとき、やってはいけないことがあります。

 それは、「こういうものを作りたい」という感じで乗り込んでいくこと。絶対にうまくいかないし、こういう視点ではいい「主婦」になることは無理です。まずは「棚卸し」、すなわち全部並べてみて検品作業することが欠かせません。

 自分はそもそもこんがらがった糸のカタマリみたいなものを渡されることが多いのですが、それをまずほどく作業を、クライアントと一緒にやっていきます。「このぐらい長い赤い糸が何本ありますね。青い糸は何本ありますね」と言って、それをテーブルの上に広げてから、「じゃ、この糸を使ってどんな布を織りましょうか」と。そういうステップが必要です。

その会社が持っているポテンシャルに当事者が気づいていないことは、案外多い。社長は気づいているけれども現場は気づいていなかったり、その逆だったり。その人たちが持っている本質的な価値をまずどうつかむかが、「主婦料理」の最初のプロセスだと思います。

【応用編】
強みの読みかえで誕生!「自分好み」にカスタマイズできる寿司店

 シェフで思い出したわけではありませんが、同じように「すでにあるもの」を活用したのが、回転寿司チェーン「スシロー」とのお仕事です。新業態である都市型店舗の、店名、ロゴ、グラフィック、食器、制服、インテリアなどをトータルにデザインしました。

 従来の「スシロー」には、高度なオペレーション力によって大量のオーダーに対応できる大型店としての強みがあります。都市型店舗を出すからといって、その強みを捨ててしまっては、「主婦の料理」にはなりません。

 そこで自分は、その強みを比較的小規模なお店に生かせば、細かいリクエストに対してもスピーディに対応できると考えました。すると、

  • ネタを炙ったり、トッピングを選んだり、来店者が好みに合わせて自由にお寿司をアレンジしてオーダーできる
  • そのオーダーをタブレットを使うシステムで行うことで、女性など1人では入りづらいと思っている層にもアプローチする

 という、すでにある強みをそのまま転用できるアイデアが生まれました。

 そして2015年1月、「好きなものを、好きな量だけ、好きなタイミングで食べられる」という究極の贅沢を実現する寿司店、その名も「ツマミグイ」がオープン。

その技術、本当に「型落ち」ですか?「ツマミグイ」の外観
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 ロゴも、気軽に好みのものを「つまむ」感覚をモチーフにしています。オーダーしながら料理がつまめるように、店内の円形のカウンターにいろいろな料理を少量ずつ用意。「つまみやすい」ように水滴型にデザインしたセルフサービス用の食器は、トレイに載せて並べると花のような形ができあがります。もちろん、「つまみすぎ」にはご注意を……。