「やりたい」から派生する
兼務・兼業のススメ

:仕事のアプローチに決まりがないとはいえ、東京R不動産では扱うものが個性のある不動産であるということまでは決まっています。リノベーションの企画などもやっていますが、いずれにせよ仕事内容の方向性やテーマ自体は決まっているともいえます。

 ほぼ日さんの場合、新人に何も指示しないとなると、仕事の始まり方はどうなっているんですか?自分でやることを探すということは、一人ひとりに、「キミは何がやりたいの?」という問いかけがあるんですか?

篠田:それすらも、あえて聞くことはありません。本人が「これをやりたい」と言い出すまで、みんな待っているんです。

:例えば、自分からこれをやりたいというのは持っていないんだけど、何でもやりますという人は、ネガティブに見られるということですか?

篠田:おそらく、そういう人にとっては、ほぼ日は居心地が悪いと思います。

奥野:逆に、別の部署でも「動機」さえあれば、どんな仕事をしてもいいという風潮があるんです。そこに、垣根はありません。管理部門の担当者で、ものすごく宇宙が好きな人がいるのですが、彼女は宇宙のコンテンツに参加しています。つまり、挙手性というか、これをやりたいといえば、違う部署だろうと参加できてしまう、組織横断型のチームを作りやすい環境にあるのだと思います。このあたりも「楽しくたって仕事はできる」「公私混同」のいい効果かなと。東京R不動産では、「横断型」のやり方はありますか?

吉里:東京R不動産は基本的には不動産サイトですが、不動産以外も含めた新しいサービスを始めることがあります。そのときそれには誰でも参加することができますし、誰でも新たな企画や事業を始める権利や自由が“常に”ある状態です。もちろんそれらを兼務して進める人もいます。

篠田:なるほど。そういう意味では、ほぼ日では「兼務」ばかりですね。私も財務をやりながら、通訳をしたりしています。1つのことだけやります、という気持ちだと、ほぼ日では居づらいかもしれません。

だから、僕らはこの働き方を選んだ』の中では「兼務」ならぬ「兼業のススメ」という項目がありますけど、業務内容が異なると、やっぱり派生させた別の組織なりを用意したほうがよくなるということですか?

吉里:兼業することが前提で仕事をしているわけではないけれど、東京R不動産を1つのバンドとすると、そのバンドは活動の中心にあって、解散することはない。でもそこから派生した別ユニットが生まれたり、ソロ活動があっても構わないということなんです。

東京R不動産を運営するスピークにて、会議の1シーン

:ルーツは同じでも、やる音楽が違えばユニット名もメンバーも変わるし、ノリも動き方も変わるのと同じです。それらを一つの大きなカサの中で捉えるより、ほどよく自立的な存在にする方が個性も進化しますよね。

 現在グループサイトには、物販サイトや撮影ロケーション検索サービスなどがありますが、これらはメンバーがグループ会社をつくって経営していたりします。でも、これらのメンバーも不動産の仕事と兼業しながらやっています。自分の会社をやっている人がメンバーとして参画しているケースもありますが、そうしたメンバーが何も違和感なく共存している状況があります。

吉里:明確ではないけれど東京R不動産という世界の中にあってもおかしくないものかどうか、という共通感覚がメンバーの間で確実に共有されているんですね。その共通感覚を保持しながら兼業やスピンオフが増えていけば、結果的に、東京R不動産の事業の広がりやイメージアップにつながっていきます。従って、東京R不動産というコンセプトの定義自体をよい形で広げていくような兼業やスピンオフは、これからも“奨励”すると思います。