先にルールや予算はない。
話し合いから商品は生まれる

吉里:東京R不動産でその物件を扱うかどうかの基準自体は、明文化されたものではなく、「僕らがグッとくるかどうか」だったりするので、一般的に見ればいい物件と言われるようなものでも、サイトに合わないものであれば取り上げません。

 ほぼ日さんの商品に関しては、企画から完成までにも、1年も2年もかかるものがあると思うんですが、アイデア自体は、それぞれが動機を持っている限り、どんどん出てくるわけですよね。アイデアの取捨選択はどうしているんですか?

篠田:これをやってみたい、という動機が持った人がいて、みんなもそれを面白いと思ったとしても、商品として成就するまでの長い道程の中で、「この商品を出すのは今じゃないから、やめておこうか」と止まるものはたくさんあります。お客様からお金をいただくということに関しては、特にシビアです。

奥野:僕も商品のチームに入っていますが、日々ミーティングがあるんです。サンプルができてきた、色はどうするのか、などとミーティングの積み重ねの中で取捨選択はされていきます。たまに「船頭」の糸井が入ってきて方向性が間違っていないかどうか確認はしますが、基本的には毎日の話し合いの中で決まっていくんだと思います。
吉里:予算はどうするんですか?初めから篠田さんが管理しているとか……。

東京糸井重里事務所のエントランスに飾られた、ほぼ日手帳の数々。

篠田:いえいえ、初めからこれだけの予算でやってちょうだいね、という話はしません。どこでプロジェクトが動いていて、それがどういう規模なのか。そういうことは、日々の仕事の中で感じることができるんです。その中でアンテナを張っておいて、「あれはお金を使うのかな?」ということを見つけると、チームの人たちに状況を聞いて、予算が必要かどうか確認をしますね。

:それは、かなりユルいやり方ですよね、やっぱり。

篠田:ほぼ日において、コンテンツを発信してその中で商品を売っていきましょうという風土は、自然発生的に生まれてきたものなんです。だから、できればタダでできないかな、などと発足当初は真剣に言っていたし、それは今も変わりません。

 糸井はよく、「お金より信用」と言います。信用があればお金がなくてもできることがあるし、お金だけでは解決できないことも信用があれば乗り越えられることもあるわけです。積み上げてきた信用があればこそ、予算が必要になった時でも、「どうにかタダでできないのか」ということを、自分たちのチームや周りの人に相談する。すると、周りは協力する。それが風土としてあるんです。だから、スタンドプレー的に予算を使うようなことはないですね。(第3回に続く)