毎月20万人が訪れる不動産サイト「東京R不動産」を運営するチームは、いわゆる普通の「会社」とは少し違う組織だ。2つの会社が共同運営という形になっているが、現場のメンバーはフリーエージェント・スタイルの個人事業主たちの集まりである。一方、1日150万PVを誇る人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」を運営するのは東京糸井重里事務所。こちらは「会社」ではあるが、社員それぞれが自分の仕事に責任を持つ、どこかフリーランス集団のような働き方をしている。「面白い」「変わっている」と注目される2つの会社の対談シリーズ第2回は、それぞれの会社の「組織のあり方」について。
※この記事(2012年2月14日公開)は、東京R不動産がテレビ東京系列「カンブリア宮殿」に出演したことを記念して、再配信しています。

「上司」はいらない!
最後は個人が判断する組織

ほぼ日・篠田第1回でお話ししたように、ほぼ日の組織は船にたとえられていて、フラットな組織だけど船頭がいて、全体の方向性を決めています。でも、東京R不動産が目指すのは「トータルフットボール」で、全員で攻守にあたるということでした。ちなみに、「キャプテン」のような存在はいたりするんですか?

林 厚見(はやし・あつみ)
株式会社スピーク共同代表/「東京R不動産」ディレクター。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経てコロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。「東京R不動産」では主に事業面のマネジメントを担い、他に不動産の開発・再生における事業企画・プロデュース、カフェ・宿の経営などを行う。

東京R不動産・林:全体の方向性に関わる判断をするマネジメントメンバーはいるのですが、それは1人ではなく、数人で役割と視点を分担しているイメージです。そして「プレーヤー」たちの中にもベテランと新人はいるので、何人かのリーダー的な存在はいますが、いわゆる「上下関係」の意識や肩書きはありません。ほぼ日の場合は、いわゆる「上司」という存在はいるんでしょうか?

篠田:今のところはいません。ただ、主に商品のプロジェクトでは「チームリーダー」が存在します。書きもののコンテンツについては、ボリュームにしても自分で決裁できる部分が大きいけれど、商品を作っていくようなプロジェクトでは、企画立案から商品完成までに、業務も多いしお金も動くことになります。そのため、1つの商品に対するチームメンバーは比較的固定化され、その中にチームリーダーが存在するわけです。

 集団を束ねる人は、最後のジャッジをする役割です。あくまでもお客様に届ける商品という1つのコンテンツのフィニッシャーなんですね。ただ、チームリーダーは上司ではないので、「上司」のようにメンバーの仕事を規定したり、行動を管理したり、業績を評価したりすることはありません。

:プロジェクトマネジャーはいるけれど、「部長」はいないということですね。

篠田真貴子(しのだ・まきこ)
米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、2008年に東京糸井重里事務所に入社。取締役CFOとして、管理部門、事業計画、経営企画のような仕事を組み立て中。

篠田:それが実は、いるんです。ここ3年ほどで増えた社員数に対応すべく、人事制度を作り、ゆるやかな組織図もあります。だから「部」という仕事の塊はあり、そこに「部長」は置いています。管理部、事業支援部、宇宙部、編集部、デザイン部、マーケティング部……など(※組織図はこちら)。

 その中で、社内の他のチームの動きや全体を見ながら判断するのが得意な人が、部長という立場にいるんですね。まぁ、部長といえども「権限」はないので、通常の企業の部長ならきっと、自分が指示をすれば部下がそれにしたがって動くものだと考えると思いますが、ほぼ日では部長はその部のメンバーに相談されたらアドバイスを与える人という位置づけです。さらに、相談してきた人に部長が「こうしたらいいんじゃない?」とアドバイスをしたとしても、最終的な判断は本人に委ねられていますね。

東京R不動産・吉里:いわゆるピラミッド型の会社とは違うところが、僕らとも似ていますね。僕らは個人事業主が集まってチームとして動いているわけで、当然そこに上司・部下という仕組みはありません。その中で新しい企画やタスクフォースができるときにはゆるやかなグループが生まれますが、イメージとしては新しい部活ができるような感じです。仕事は個人が活躍することが本質であって、「部署」「部長」が、働く個人に対して指示するという形はほとんどないんです。