今年第一四半期、上海市の百貨店の売上高は160億4400万元となり、前年同期比7.5%の減少となった。昨年上半期、上海市の百貨店は歴史的な落ち込みを経験したが、いまだ低迷が続いている。習近平政権による倹約令や不動産価格の成長の頭打ちなどが、消費マインドを冷え込ませ、上海市の小売市場を鈍化させている。

日本での爆買いパワーを内需に転換できない中国の焦燥中国人客の爆買いパワーは止むことがない

 ところがその一方で、海外では中国人の爆買いパワーが炸裂している。今年2月後半、春節(旧正月)時の訪日中国人旅行客は10日間で60億元(約1125億円)を消費し、4月上旬の清明節(日本のお盆に相当)の休暇では70億元を消費したといわれている。

 この状況を見た中国政府は、爆買いパワーを国内に回帰させるべく策を講じた。それが「日用品の輸入関税引き下げ」である。6月1日からは、一部の衣料品や靴、スキンケア用品、紙おむつなどの輸入品が中国でも購入しやすくなると期待されている。

以前なら考えられない
ブランドの「叩き売り」

 中国では長期にわたり、内外価格差が存在した。例えば、1000元の化粧品を輸入すると関税が10%、増値税(日本の消費税に相当)が最高17%、消費税(奢侈品に課税)が30%課税され、最終価格は1758元に跳ね上がる。中国の消費者には「中国で輸入品を買えば、常に50%以上も余分に支払わされる」という心理があり、それが国内での消費を妨げる一因となってきた。

 さて、その上海で、先月、高級ブランド品のセールが行われた。筆者のスマートフォンに「グッチ、上海全店で50%オフ」の記事が着信したのは5月26日のことだった。すでに成長鈍化の局面にあることはたびたび報道されてはいたが、強気一点張りの高級ブランドが「叩き売り」に出るというのは珍しいことだった。

 上海でセールを行った13の店舗には、20~30代の女性たちの長蛇の列ができた。50%オフならば、海外で免税品を買うような割得感がある。

 中国のファッション業界に長年携わる日本人は「ここまでの値引きは初めて見る」といいつつ、次のように話してくれた。