とくに「交通事故」は、近年急激にマーケティングが盛んになり、案件獲得がかなり難しくなっております。認知活動の中心はウェブマーケティングですが、競争の激化に伴い、整骨院や整形外科に対して勉強会を開始することでルート開拓を進めたり、バイク店にポスターを貼ってもらったりといったような活動がされるようになりました。アメリカでは事故後の救急車を追いかける弁護士(ambulance chaser)もいるそうなので、そこまでではないにしても、競争が過熱しているのは確かでしょう。

3分野の中で弁護士が介入する余地が最も大きいのは「相続」です。解決までに長い時間がかかるためメイン業務にしにくいとか、顧客の多くが高齢者のため若手弁護士では受任をしにくいなどの課題はあるにしても、他士業ではなく弁護士に依頼するメリットを訴求するなど、工夫次第で受任を増やすことはできるでしょう。

一方、法人向け業務では、「企業法務」や「渉外」はリーマンショック後に売上が低迷していましたが、昨年末あたりから急回復しているという話をご支援先の先生から聞くことが多いです。最近とくに増えているのがアジアへの投資・進出案件で、円安の恩恵を受けるかたちになっていますね。逆に、マーケットが大幅に収縮しているのが「倒産・再生」分野です。モラトリアム法(金融円滑化法)によりメインバンクが取引先企業への関与を強めており、倒産・再生件数が減少の一途をたどっていることが主な要因です。

――法律事務所が「選ばれ続ける事務所」になるために、どんな視点で差別化を図るべきでしょうか。

当社が紹介している「差別化の8要素」(立地、規模、ブランド、商品力、販促力、接客力、価格力、固定客化)のうち、法律事務所でとくに重要なのは「商品力」「立地」「販促力」の3つです。すなわち、商品力で差別化を図り、その商品のターゲットに合った立地を選び、商品と立地に合わせて最適な販促計画を立てるということです。

1つ目の「商品」の差別化では、縦横2つの軸で商品力を高めていくのが有効です。まず縦軸というのは、従来の業務を深掘りして商品力を上げていく方法で、ある分野に特化して専門性を高めていくということです。

弁護士が提供しているサービスは、他の士業に比べて差別化が図りやすいと言えます。医療の診療科が専門分化しているのと同じように、法律事務所もある分野に特化して専門性を高めたほうが問題解決が図りやすくなります。