社会保険労務士、税理士・公認会計士、司法書士、弁護士などの「士業」は、資格者増や競争激化などにより業界内の二極化が進んでいる。厳しい経営環境の中で「選ばれ続ける事務所」になるためには何が必要か。士業の経営指導で抜群の成功率を誇る船井総合研究所の経営コンサルタントが、業界の現状と差別化のポイントを語る。連載の最終回は、法律事務所の経営コンサルタント・鈴木圭介氏に話を聞いた。

――弁護士は「大増員時代」と言われて久しいですが、この10年ほどの業界環境をどうご覧になっていますか。

鈴木圭介(すずき・けいすけ)株式会社船井総合研究所 法律事務所コンサルティングチーム シニア経営コンサルタント。全国で100以上の法律事務所が参加する法律事務所経営研究会の主幹を務めている。年間250日以上は事務所へ出向いてコンサルティングを行っており、実務に精通した提案は弁護士会からも評価されている。マーケティングに関するコンサルティングのみならず、受任率の向上や業務効率の向上、パートナー制度に伴う評価制度の構築に関するコンサルティングも行っている。近著に『士業の業績革新マニュアル』(船井総合研究所 士業コンサルティンググループ著)がある。

日本の弁護士数はこの10年間で約70%増えています。その背景には、司法制度改革によって2004年から司法試験の合格者数が急増していることがあります。この大増員により、日本弁護士連合会が進めてきた「弁護士ゼロ・ワン地域の解消」(弁護士0~1名の過疎地域をなくす施策)は達成されました。

しかし、弁護士数に比例してマーケットが拡大しているわけではなく、広告や弁護士費用の自由化などの影響もあり、法律事務所の競争はかなり激しくなっています。もっとも、地方都市の競争環境は都心部ほどではなく、業務分野によっても環境は異なりますね。

個人向けの4大分野(借金問題、交通事故、離婚、相続)のうち、数年前までマーケットを牽引してきたのは「借金問題」でした。2005年以降に「過払い金請求」が急増し、マーケティングに力を入れた事務所が一気に売上を伸ばしていきました。ところがマーケティングの進んでいる都心部から徐々に案件数が減少し、2012年頃には全国的にもブームが終焉し、多くの事務所が収益を悪化させました。

過払い金請求に代わるマーケットがあればよいのですが、それ以外の3分野も競争が激しくなっています。