経営 X 人事
中原淳の学びは現場にあり!
【第9回】 2015年7月8日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授],井上佐保子

「もう一度、社会に戻って働きたい」
農業での再出発・再挑戦を支援する畑の学び

Reflection
「無気力」を学習せざるを得なかった方々への支援

 農業は、専門知識を必要とする仕事から、誰でも担える比較的優しい仕事まで、人によって、さまざまな関わり方ができます。また、それを自然に触れながら、集団で行うことで、信頼やチームといったものを学ぶ機会にもなります。そして、収穫というかたちで、自らがかかわった成果が可視化され、他者に喜ばれる、食べてもらえるという特徴があります。

 小島さんの取り組みは、もう一度立ち上がろうとする方々に、そうした機会を提供する非常に貴重な試みであると感じ、深い感銘を受けました。

 同時に感じたのは、これを小島さんだけの取り組みにしてはいけないのではないか、ということです。小島さんは、「今のところ、私だけでは1度に6名程度しか受け入れられません。農スクールをモデルとして、全国で同じような取り組みを検討して欲しい」とおっしゃっていました。

 「パンドラの箱」をメタファとするような過酷な取り組みを、小島さんという個人だけが担っていくことには制約があります。公的な援助も含めて、国レベルの支援が必要であると強く実感しています。

 小島さんのところにこられる方の中には、これまでの辛い経験で「無気力」や「虚無感」といったようなものを身につけざるを得なかった方がいらっしゃるそうです。中には、過去の虐待、熾烈な家庭環境が原因のひとつで、就学・就労がうまくいかなったケースも存在するそうです。「生まれ」は誰にも選ぶことができません。特に、こうした「やむを得ず、行き着いてしまった方々」への公的支援の充実は、喫緊の課題だと感じます。

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中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 

井上佐保子(いのうえ・さおこ)

1972年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。通信社、出版社勤務を経て、2006年にフリーランスライターとして独立。企業の人材育成、人材マネジメント、キャリアなどをテーマとして、企業事例、インタビュー記事などを執筆。人事・人材育成分野の書籍ライティングも手がけている。


中原淳の学びは現場にあり!

このコーナーでは、毎回、“学びに満ちた仕事の現場”を訪問し、WorkplaceLearning(職場の学び)の観点から、検証していきます。日頃はあまり目にすることのないさまざまな職種の「現場」。そこでは、どのような仕事がなされ、人はどのようにして知識やスキルを学び、育っているのでしょうか。企業の人材育成では見落とされがちな「学びのスイッチ」を掘り当てます。

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