昨今は、VCの問題もさることながら、投資したくてもなかなかいいシーズを持ったベンチャーがないといった声も聞かれるようになってきました。日本のライフサイエンスは、基礎研究段階では、米国に次いで世界で二番・三番手争いを英国と競っているのですが、臨床研究になると世界で十番手くらいに下がってしまって、臨床研究から起業へつなげていくステージの充実が必要です。AMED(日本医療研究開発機構)が、本年4月に発足しましたので、ここはAMEDからの支援の充実が大いに期待されるところです。

 臨床研究が充実してくれば、それをシーズに起業し、国内外のバイオVCや売却先の大企業とのマッチングを支える社会環境が整えば、「死の谷」も埋まっていくものと思われます。

 もう1つ重要なのは“バイオ系ベンチャー”を担う経営人材です。私も、阪大発バイオベンチャーの戦略担当をしていたことがありますが、バイオ・ヘルスケア・医療機器の大学発ベンチャーのシーズを提供するのは、理系の学生や教員。研究者だとしても、事業にしていくためには、経営戦略、マーケティングや販路開拓、資金調達、営業といった実際の経営に携わるCOO、CFO、CMO、CSOなどの人材も必要となります。

 ちなみに、バイオベンチャーの代表格、ユーグレナ社長の出雲充さんは、東大農学部出身ではありますが、在学中に私のゼミに出入りし、社会起業家を志す友人たちとソーシャルプロデュースの素養を学んでいました。卒業後は東京三菱銀行で数年勤務。ビジネスへの向き合い方、お金の扱い方を実務で習得したことが、経営者としての基礎を固めていました。やはり理系といえども、ビジネスを知っている人物が舵取りをしないとなりません。いずれにしても、1人でベンチャーはできないので、様々な得意分野を持ち寄って、いいチームをつくることが肝心です。

 そういう意味では、文系出身でもビジネスの実務経験があり、バイオ・ヘルスケア・医療機器の分野に関心を持っている人には、参画するチャンスは大いにあります。私立大学は、研究インフラが国公立と比べて劣るかもしれませんが、ビジネスのプロを育て、人材の面からバイオベンチャー育成に貢献できる道もあります。もちろん、銀行、商社などの企業で実務経験を積んだ人の参画は大歓迎。今後は、大企業出身者らとバイオベンチャーを結びつける取り組みがますます必要になってきます。