なぜ、いま、パラレルキャリアなのか?

 働き方において、会社などひとつの組織が人生の中心を占める。いわゆる「会社人間」の誕生です。

 しかし失われた20年を経て、終身雇用という慣行も変化しつつあると言われています。とはいえ、その慣行が消滅したわけではありません。いまでも長時間残業の日々を繰り返し、会社を中心に据えた人生を送っている場合があります。同時に、ひとつの組織だけを中心とは考えない多様な働き方も増えてきています。

 日本的雇用と多様な働き方が併存する時代だからこそ、自分はどのようなキャリアを選択するのか、そのことに関心を持つ方が増えてきているのかもしれません。だからこそ、過去から存在していたパラレルキャリアという考え方に、新たに注目が集まっているのでしょう。

疑問3:本業からの逃避でパラレルキャリアを始めるのは、よくないことか?

 本業がうまくいかない、嫌気がさす――だからこそ、本業以外の活動を始める。いわゆる本業からの逃避としてパラレルキャリアを始める。このような始め方に批判があることは事実です。

 本業から逃避して社会活動を始めても、どちらも中途半端になってしまう。そのあげく社会活動にも嫌気がさして、すぐにやめてしまう。それなら、パラレルキャリアなど目指さないで、まずは本業にしっかり取り組むことに専念すべきだというわけです。

 たしかに本業で基礎を固めたほうが、その本業の学びを社会活動に活かしている事例を多く見ることができます。ただ、本業をしっかりと行ない、その満足度が高い場合にだけパラレルキャリアに取り組むことができると考えることには少し違和感があります。

 筆者自身、過去にパラレルキャリアを始めたのは、本業に行き詰まりを感じていた時でした。このまま本業だけ続けていても精神的に疲れそうで、少し気分転換をしたい、また何か新しいチャンスをつかめるかもしれない、そんな思いでパラレルキャリアを始めたのでした。

 ひらたく言えば、筆者は、まさに逃避的にパラレルキャリアを始めたのです。最初は逃避だったのですが、幸い、その後は社会活動での学びを本業に活かすことができました。筆者の周囲でも、逃避的に始めたパラレルキャリアが、ひょんなことから次の新しいキャリアの選択につながった場合があります。