対人関係が心の健康をつくっている

 私は、対人関係療法(Interpersonal Psychotherapy)という、科学的に効果が実証された(エビデンス・ベイストな)精神療法を用いて、うつ病、適応障害、トラウマ関連障害、摂食障害などを治療している精神科医です。

 もう20年以上、臨床の現場に携わって来ていますが、この仕事を通してつくづく実感するのは、対人関係のあり方が、いかにその人の心の健康と密接に関連しているかということです。

 例えば、うつ病に対して対人関係療法は、抗うつ薬と同じくらいの効果が得られることが科学的な手法で証明されています。

 対人関係療法の治療の際に注目するのは、重要な対人関係の問題と症状の関連性です。

 対人関係の状況が悪くなると、症状も悪くなる一方で、対人関係がよい状態になると、症状も好転します。これは、その逆向きも同じです。

 悲観的になる、ピリピリする、など症状が悪くなると対人関係も悪化し、楽観的になる、穏やかになるなど、症状がよくなると、対人関係も寛大で温かいものに変わったりします。

 症状に最も強い影響を与えている対人関係の問題は何かを見つけ出し、その改善に取り組んでいくことが対人関係療法の中心です。