しょっちゅう立ち止まって考える作戦

 プロジェクトを大失敗させるのは、ズバリ組織の硬直性です。
「経営会議で決裁が下りたから……」
「社長の指示だから……」
 といった感じで、方針を変えなさ過ぎるのです。

 会社組織だから、方針を守ること自体は別にいいのですが、「一度決まったプロジェクト方針が、なかなか変えられない」という硬直性が問題です。

 ITプロジェクトでは、スタート時には10億かかると思っていたのに、検討を進めると、15億かかることがわかった!ということが頻繁に起こります。

 でも、たいていは「もう決まったことだから」と、無理やり10億に収めようと目をつぶって突っ走り、破綻するのです。ここで注目すべきは、「たいていの破綻プロジェクトでは、現場で働く人たちは失敗すると思いながら仕事を続ける」ことです。
「このプロジェクト、絶対完成しないよ」
「完成したとして、誰が嬉しいの?」
 と、つぶやきながら仕事を続けるのが、サラリーマンの性(さが)です。

 要は「ひとたび経営陣から計画を承認・指示されたら、突撃するのみ」という、いつもの仕事のスタイルが、プロジェクトという先行きが不透明な仕事にマッチしていない。

 そうではなく、ITプロジェクトが進む度に立ち止まり、
「このままやって、予定どおりになるかな?」
「予定を変更したとしても、続ける価値があるかな?」
 と、問い続けなければなりません。

 そして、やり続けることに疑問が生じたら、経営陣に対して声をあげなければならないし、経営陣も叱りつけたりせず、真摯に考え直す必要があります。
 そこでは「やり遂げる意思だけが成功を生む」といった人生訓は有害です。そういう根性論は、もっと成功率が高い仕事(気合さえあれば、なんとかなる仕事)に向いているのです。

 そう、あたかもPKの時だけゴールキーパーがギャンブルをするのと同じように、成功率が低い仕事をする時は、普段とスタイルを変えなければならないのです。