「はたらくを楽しむ」職場づくりの工夫
【中原】ただ金額を割り引くよりも、お客を喜ばせるための自分たちのアイデア実現に使うとなると、やりがいも出ますね。
【大久保】12円のガーリックライスですが、10円のスナック菓子よりはきっとおいしんじゃないかと(笑)。大事なのは「12円分の割引をされるのと、ガーリックライスのサービス、どちらがうれしいのか?」ということです。
【中原】従業員の方から出てきたいろんなアイデアは、どうやって選別していますか?
【大久保】基本的スタンスとしては、「悪いものを切る」ではなく、「いいものを表彰する」という考え方をしています。サービスの評価基準の定義6項目をクリアしたもので、上位3つを毎月表彰しています。6つの定義は次のとおりです。
2. EIS スタッフが楽しさを感じてやれるか
3. Operation 手間とCISが比例しているか。どのレベルのスタッフも今日すぐに始められるか
4. Naming 気の利いた名前か ex. ちびの恩返し
5. 原価とCISのバランス
6. Story 会社のMission(「食のあるべき姿を追求する」=食へのリスペクト)に合っているか
【中原】そのようなサービスを始めたとき、お客さんの反応は変わりました?
【大久保】お客様の反応もスタッフの反応も変わりました。実際の成果としてお店のリピート率も上がりました。
「ジャブ」に関して一番印象に残っているエピソードがあります。以前、「お持ち帰り味噌」を考えた佐藤さんという女子大生アルバイトがいたのですが、彼女は家族連れのお客様がいらしたとき、小さなお子さんをこっそり呼んで、帰り際にお土産として渡す小さなタッパーに何か書かせていたんですよ。それはお子さんからお母さんへのメッセージカードでした。「塚田農場」ではお土産として小さなタッパーに味噌を入れて渡すのですが、彼女はそれにカードをつけてラッピングし、帰りがけにその子からお母さんに渡すというサプライズをやりました。実はその日は「母の日」だったんですよ。それでお母さんが感激してお店で泣いたんです。ちなみにこのジャブは「塚田のジョー」で「ちびの恩返し」という件名で共有されています。
アルバイトだった佐藤さんは、大学卒業後には出版社に就職しましたが、この前5年ぶりにメールで「ジャブ思いつきました」って連絡が来ました。「久しぶりです」じゃないんだな、と(笑)。
【中原】「ジャブ」という用語が面白いですよね。
【大久保】これは僕がもともとボクシングをやっていたからです。最初はミーティングでスタッフに「店内販促案を考えてきて」と言ったのですが、誰も考えてこなかったんですね。でも、「ジャブを考えてこい」って言うようにしたら考えてくるようになったんです。アルバイトの職場でもユニークな「共通言語」をつくるというのは大事だと思います。仕事にゲーム性が加わって楽しく取り組めるようになるんですよね。
【渋谷】インテリジェンスのスローガンは、「はたらくを楽しもう」です。アルバイト・パートさんの「人」をしっかり見つめて、1人ひとりが「はたらくを楽しむ」世界に変革していかないと、現在の圧倒的な人手不足は解消されません。今回のプロジェクトも、そんなメッセージや思いをこめて始めました。
現場の変革というと大袈裟ですが、大久保さんのような考え方のできる店長さんが日本にたくさん生まれればいいな、と思っているんです。