同日選で得られる、3年間という
政策にじっくり取り組める時間

 この連載では、英国ではキャメロン政権が、首相の解散権を自ら封印し、5年間かけて財政再建と規制緩和に取り組んだことを取り上げた(第106回)。当初、キャメロン政権の支持率は低迷したが、緊縮財政の断行と、住宅市場活性化や法人税率のEU最低水準への引き下げによる海外企業の誘致や投資の積極的な呼び込み、量的緩和政策の実行などを巧みに織り交ぜた経済運営は、次第に効果を現した。そして、5年後の総選挙で、キャメロン政権は支持率を急回復し、大逆転勝利を収めた。キャメロン政権が不人気な財政再建に落ち着いて取り組めたのは、国民に財政再建の意義を理解する時間を十分に与えることができたからである。

 逆に、日本政治の問題点はとにかく選挙が多すぎることである(第105回)。安倍首相が政権に返り咲いた時から、既に3回の国政選挙があった。そして、今年7月にはまた選挙があるのだ。選挙と選挙の間が短期間であると、政権が看板に掲げる重要政策でさえも、議論がほとんどないままに選挙に突入することになる。国民の側からすれば、政策の重要性を理解する時間をほとんど得られなくなってしまう。

 現在も、7月の参院選を前にして、さまざまな重要課題が先送りされようとしている。例えば、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案の今国会成立は断念となる見込みだ。前述の通り、甘利明前経済財政・再生相が現金授受問題で辞任した。また、安倍政権がTPPの交渉資料を黒塗りで開示したり、審議を仕切る衆院特別委員長が「内幕本」を出そうとしたりして、審議も紛糾が続いている。政府・与党は強引な審議との批判を避けるため、参院選後に審議を先送りする方針である。

 衆参で安定多数を確保し、「決められる政治」を確立すると宣言した安倍政権だったが(第64回)、結局重要な課題ほど腰が引けて、選挙後に先送りされるという状況が続いている。それは、政治家の資質の問題というよりも、選挙が1つ終わっても、すぐに次の選挙を考えなければならないため、落ち着いて重要課題に取り組む時間が確保できないという、制度的な欠陥があると考えるべきだろう。

 だが、衆参同日選を断行すれば、政治がじっくりと重要案件に取り組み、国民がそれを理解する時間を得ることができる。同日選後、次の参院選は2019年7月であり、衆院議員の任期満了は2020年7月だ。途中で衆院解散がなければ、3年間の選挙がない期間が確保されることになるのだ。

 一方、同日選がなければ、現在の衆院任期満了は2018年12月だ。参院選後、2年5ヵ月間あるが、衆院任期の折り返しを過ぎると、政治家は常に解散を意識して落ち着きがなくなるものだ。やはり、同日選後に衆参ともに新しい任期をスタートしてから「3年間」が確保できる方がいい。不人気だが重要な政策に落ち着いて取り組める期間にできるのではないだろうか。