人間は自分の考えが
多数派だと思い込む

 このような旅行の仕方が常識となっていると、外国人を案内したり観光ツアーを組む場合にも、知らず知らずのうちに日本的なスキームに陥ってしまう。

 これは社会心理学では「フォールス・コンセンサス効果」と呼ばれるものだ。これは自分の考えが多数派であると、知らず知らずのうちに思いこんでしまう効果のことである。

 米国の社会心理学者のロスが行った有名な実験がある。彼は、学生にサンドイッチマンの格好をしてキャンパスを歩き回るよう依頼した。そして、それを受け入れた学生と拒否した学生に「同じことをあなたが別の学生に頼んだら、OKしてくれると思うか?」と尋ねた。

 受け入れた学生の回答は、「受け入れる」が6割で「拒否する」が4割だったのに対し、拒否した学生の回答は「受け入れる」が3割で「拒否する」が7割という、真逆の結果となった。これはすなわち、「自分の選択は他の人も選ぶはずだ」という素朴な思いこみが人に備わっていることを意味している。

 同じように、日本人の観光の仕方は世界共通であると、日本人は思いこみがちになる。それが「体験」を重視しない観光ツアーの提供につながってしまうのである。

 表面をなぞるだけの観光は、実は日本人に限ったことではない。最近激増している中国人観光客も同様である。「観光地を訪れ写真を撮り、土産を買う」という行動の繰り返しが一般的である。

 この例が、日本人の持つフォールス・コンセンサス効果をさらに強めている可能性がある。中国人が日本人と同じような行動をとるので、この方法が正しいのだという確信を持ってしまうのだ。

 マレーシアでのわさびすりおろし体験が彼らを大いに興奮させたという事実は、日本人が外国人に提供する観光ツアーの内容を考える参考になるはずだ。

 外国人観光客が激増している今は、日本人の得意とする「おもてなし」の幅を広げるチャンスなのだ。世界の多様性(ダイバーシティ)と日本人のおもてなしの心がうまくかみ合ったとき、「日本」という国のプレゼンスがより一層強くなると筆者は考えるとともに、それを強く希望している。