日本が大好きなマレーシア人が
食べたくても食べられないラーメン
本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。
「グローバル化」が叫ばれて久しいが、多くの日本人にとって、グローバル化は「(アメリカ文化を中心とする)世界的スタンダードでビジネスを展開する」というイメージではないかと推察される。
しかしながらその半面、グローバル化とは日本の文化を他国に輸出するチャンスでもある。政府が推し進めているクールジャパンも、内容の是非はともかく、後者の視点からの戦略だと筆者は理解している。
日本文化の輸出という点からとりわけ取り上げられるのは、アニメコンテンツだ。日本のアニメ輸出のピークは1990年代であり、今は下り坂だという意見もあるが、重要なのは「根付き度」であると筆者は考えている。つまり、日本のアニメコンテンツマーケットが、いかに持続するかだ。
その意味では、筆者の住むマレーシアは成功例と言えるだろう。マハティール元首相の「ルックイースト政策」によって、日本の知名度や人気度は昔から高い。そのため、日本のアニメコンテンツも以前から輸入されており、現在の20代、30代のマレーシア人は、みなドラえもん(しかも、大山のぶ代時代の)、ウルトラマン、セーラームーンを当たり前に観ており、子どものころの思い出話として頻繁に会話に登場する。クレヨンしんちゃんや妖怪ウォッチもマレー語で放送されている。日本のアニメはマレーシアにおいて市民権を得ており、しっかり根付いているといっていいだろう。
先日、自宅近くのショッピングモールで、日本のアニマックスが主催するイベント「アニマックス・カーニバル」が開催された。日本で人気のアニソンシンガーによるライブやコスプレコンテストなどが行われ、3万人にも及ぶ来場者で大いに盛り上がった。
来場者の大半は学生や若い社会人で、筆者の勤める大学の学生も多かったという。筆者自身も、ゼミでこのイベントについて紹介したところ、学生のレスポンスのテンションが異様に高くて驚いてしまった。
イベント自体は毎年行われており、今年で5回目である。例年通り成功裏に終了した。
だが、筆者がここで紹介したいのは、この会場で意外な「大成功」をおさめた、あるブースの商品についてである。
2日間にわたる本イベントでは、アニメ関連グッズを扱う店が出店されていたが、その横で異彩を放っていた小さなブースがあった。売っているのはラーメン。「侍」の黒文字が金色の箱に大きく描かれている(写真参照)。この半年ほど、イスラム圏でじわじわと人気が出てきたラーメン、『侍ラーメン』だ。鹿児島にあるラジーゼン国際食文化研究所が開発した「完全アニマルフリー」のラーメンである。
アニマルフリーのため、菜食主義者(ベジタリアン)、イスラム教徒、ヒンドゥ教徒など、宗教的に食の制限がある人にも安心して食べてもらえる。筆者も食べたことがあるが、担々麺風スープは旨味があり濃厚で、とてもアニマルフリーとは思えない美味しさだ。麺も良い。日本が世界に誇るB級グルメのラーメンとして、その名に恥じない出来栄えだと思った。