「自分」が大事な若手に、どう向き合うか

和田 誰かの役に立つのが仕事だというのは、今日のメンバー内(ベテラン管理職)だと、とってもしっくり来る考えだとは思うんです。けれど若い人だとそれ以前に、私が輝ける場所とか、どう評価されたいとか、自己承認欲求も含めて「私」が前に来ている人が結構いると思います。

 そういう人たちに対して、人の役に立つのが仕事だっていうのを、頭でではなく、腹落ちしてもらうには、どうしたらいいんでしょうか。

楠木 まず前提として、若いうちはしょうがないですよね。誰だって自分が主人公なんで。自分の存在が地球よりも重たい。

和田 そうなんですよね。自分も含めて。

楠木 おそらく、みんなそうなんです。みんな、いい感じでエイジングして、だんだん自分の存在が軽くなっていく。これは年をとることの、ものすごくポジティブな面ですね。

 その前提で申しますと、僕はたぶん、何でもいいから売って来いって送りだしますね。何をやってもいいから、客のところへ行って、金引っ張って来いって言います。必ず、儲けを出して来いという仕事をさせますね。

 自分をどんなに輝かせてもいいとは思います。だけど、とにかくビジネスである以上、基本的には儲からなきゃいけない。非営利の仕事は別にして、営利企業であればこれを忘れてはなりませんね。つまり収入がコストを上回っていることが大事なんです。

 なにも「カネカネカネ……」という話ではありません。利益が出るということは、競争の中で独自の価値をつくっているということでもあり、納税できるということでもあり、雇用をつくって守れるということでもある。この3つを同時に起こす。その鍵を握っているのが、儲かるかどうかなんです。

 ということは、極論をすれば、売上が増えるか、コストが下がるか、その両方か。必ずこの三つのどれかにつながることをしなければならない。その時にその人が何をするかですよね。「自分が輝く」ということは仕事の目的になり得ない。

 その点で、僕はやっぱり、リクルートの江副さんはすごい人だったと思います。彼の名言ですが、「わが社に担当はない。あるのは商売のみである」。なんでもいいから、おまえら商売して来いと。どんなに小さくてもいいから、入社したらその日から、おまえの商売をして来いと。これは仕事の本質だと思うんですよ。

 自分が輝きたいという気持ちはわかります。ただ、輝いていくらになるんだよと。おまえが輝くために、どんだけコストがかかるんだと。おまえが輝いたら、電気消しても周りが明るくて仕事ができるから、電気代が浮くって言ってるのか……という話です。僕はそう思いますね。

橋本 嫌われそうですね(笑)

楠木 でも、それが仕事なんですよ。だから、輝く前に、まずは稼いで来いと言って送り出すと思います。

 輝いたほうが調子も出るし、好きなことで技量も高まって、成果が出るという強い理屈はもちろんあると思います。ただし、順番が大切ですね。