好きなようにしてください』を読んだ3名と、著者の楠木氏が語り合う座談会後編。歳を重ねるメリットから、楠木氏が考える「健康」についてまで。後編でも独自の仕事観・人生観が展開されます。(撮影・鈴木愛子、構成・肱岡彩)

人生を絶対にやり直したくない

20代は自分の存在が地球より重い楠木建
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。専攻は競争戦略。 著書に『ストーリーとしての競争戦略』『「好き嫌い」と経営』『「好き嫌い」と才能』(すべて東洋経済新報社)、 『戦略読書日記』((プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)などがある。
拡大画像表示

楠木 高橋さんはいま3部署目ということですけど、いまの仕事はどうですか?

高橋 そうですね。今は、会社の中で自分のやりたいことに一番近い仕事をさせてもらえています。食に関わる仕事がしたい、というのが念願だったので。

楠木 その食っていうのが、高橋さんにとって、持っている意味、なぜ食をやりたいのかを教えてもらえませんか。

高橋 それは自分の個人的な経験に紐づいています。大学で初めて1人暮らしをして、初めて自炊をする中で、あまりにも雑な生活をしていたもので、ちょっと体調を崩すっていうことがあったんですね。それで食べることと、生きることは、すごく深く結びついているなっていうのを思って。そこから食をライフワークにしたいという思いを持つようになりました。

20代は自分の存在が地球より重い高橋裕美(仮名)
社会人7年目。インターネット企業にて、営業、秘書を経験後、現在は食に関するサービスを担当。
拡大画像表示

楠木 根本ですもんね、生活の。仕事へのいい入り方ですよね。 僕の年になると、あまりそういうのも思い浮かばないし。こっちへ行きたいなとかも浮かばない。いつまでも心が若い人はいいでしょうけど、今更ね、全然違ったこととか、やりたくなくなるんですよ。冗談抜きに、もう一度人生やり直せって言われたらね、自殺します。

宇尾野 え、人生を辞めちゃうんですか?

楠木 もういまさら大変なので、その件は次の人生でお願いします、って言う。もう1回、たとえば20歳に戻って、人生をやり直せって言われたらね、もう布団かぶって寝ちゃいますね。大変だったって言っても、他の人と比べれば大したことないんですけどね(笑)

 僕は年を重ねる、エイジングの良いところは、昔と違って、自分の存在が軽く薄くなることですね。

 とにかく、その時の直感で、気楽に歩めるようになる。ただ、必ずその時は自分がなぜそう思うのかを、自分自身で言語化しておくのがいいですね。