【B店長】私も入社して10年間のあいだで、有休はまだ1回しか取ったことがありません(笑)。年末年始は短縮営業もありますが、私の店は大晦日も元旦も営業しているので、休むタイミングなんかも世間とは全然違いますね。
また、店によっても休みやすさはかなり違っていて、以前はデスクに座って時計を見ながら定時になるのを待って、「よし、定時だ帰ろう」って飲みに行けたときもあります(笑)。今の店はなかなかそういうわけにもいかず、月に3~4日の休みという感じですね。

【A店長】私はだいたい週に1回くらいは休みます。お店をしっかりと立て直して「よし、ようやく連休がとれるぞ」という頃合いになると、なぜかまた忙しいお店に異動になるというパターンが多くて、なかなかしっかりは休めません(笑)。

【C店長】わかります(笑)。私も以前、ボロボロ状態のお店に着任したことがあるんですが、なんとかお店を立て直して「さあ、休みを取れるぞ」というときに異動になってしまって(笑)。翌週のシフトで自分が2連休取れるようにしていたのに、なぜか後任者の店長がいきなり2連休になっちゃうという、悲しい出来事も(笑)。

【中原】最後にダイヤモンド社の藤田さん、いかがですか?

【藤田】店長さんの悩みは、売上や利益といった話が中心なのかと思っていましたが、みなさん「人」の問題で悩んでいらっしゃる方が多いので驚きました。

【B店長】チェーン店の場合、業績を左右するメニューとか戦略って、すべて本部が決めてしまうので、店長としてできることってあんまりないんですよね。だからこそ、ちゃんと人を確保して店を回していけるかが何よりもまず大事なんです。

【中原】そうなんですね。店長にできることは「よい職場をつくること」ですね。おかげさまで現場の生の声を聞かせていただき、非常に勉強になりました。今日はどうもありがとうございました。

【藤田】今回の中原先生とテンプグループさんとの調査結果をもとに、「店長のためのアルバイト育成」に関する本をつくっているところです。
いま書店さんに並んでいる店長本って、どちらかというと「一店長さん」の個人的な成功体験に基づいた書籍がほとんどでして、ちゃんとした調査やアカデミックな知見に裏打ちされているものは皆無です。
一方で、編集者として「売れる本」をつくるということを考えたときに、ターゲットが「店長」、しかもトピックが「アルバイト育成」って、いくらなんでもマーケットを絞りすぎじゃないか、と悩んだりもしていたんです。ですが、今日みなさんのお話を聞いて、その疑念が完全に払拭されました。
これまでそれぞれの店長さんが個別に持っていたノウハウを、悩んでいる全国の店長さんがシェアするきっかけになる本をつくれればいいなと思っています。今日は本当にありがとうございました。

(覆面座談会、おわり)

聞き手:中原淳(なかはら・じゅん)
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授。東京大学大学院 学際情報学府(兼任)。東京大学教養学部 学際情報科学科(兼任)。大阪大学博士(人間科学)。
1975年北海道旭川生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、マサチューセッツ工科大学客員研究員等を経て、2006年より現職。
「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、リーダーシップ開発について研究している。専門は経営学習論。
著書に、『会社の中はジレンマだらけ』(光文社新書)、『アクティブトランジション』(三省堂)、『職場学習論』(東京大学出版会)、『企業内人材育成入門』『研修開発入門』『ダイアローグ 対話する組織』(以上、ダイヤモンド社)など多数。