チャンスは自らつかむ──。よく言われることですが、サラリーマンにとっては、必ずしも現実的ではありません。人事権を握るのは上層部。会社という組織に所属する以上、チャンスは与えられるものなのです。では、どうすれば抜擢される存在になることができるのか?トヨタとソフトバンクで世間が注目する「ゼロイチ」のプロジェクトに抜擢されてきた、Pepper元開発リーダー・林要さんは、「○○」であるかどうかに尽きると言います。その理由を、著作『ゼロイチ』から抜粋してご紹介します。
「出る杭」だからチャンスが来る
チャンスは自らつかむ──。
よく言われることですが、サラリーマンにとっては、必ずしも現実的ではありません。人事権を握るのは上層部。会社という組織に所属する以上、チャンスは与えられるものなのです。
では、どうすればチャンスを与えてもらえるか?
「出世の方法」とは異なるかもしれませんが、ことゼロイチに関しては、「出る杭」になることだと思っています。「出る杭」になると叩かれることもありますが、だからこそ、タフな存在だと「認知」してもらえるとも言えます。
この「認知」が重要です。なぜなら、重要なプロジェクトの人事案件が発生したとき、上層部のなかで「認知」されていない人物の名前が候補に挙がることはないからです。当たり前のことですが、「認知」があるから「指名」される可能性が生まれるのです。
しかも、エリートとしての認知ではなく、「出る杭」としての認知であればこそ、ゼロイチのようなきわどいプロジェクトでは有効。「こういうきわどい仕事は、きわどいヤツが向いてそうだ……」などと思ってもらえる。いわば、「毒をもって毒を制する」という感じで、チャンスが巡ってくるのです。
それを僕は、トヨタ時代に痛感しました。
入社以来、僕はトヨタF1の開発チームに入ることを希望していました。しかし、F1は社内公募制となっており、それを通過しなければならないのですが、残念ながら、僕は応募条件すらクリアすることができずにいました。ネックとなっていたのが、英語です。
F1の本拠地はドイツ。世界各国からエンジニアが集まりますから、共通語は英語。そのため、TOEICで800点程度を取ることが条件とされていたのです。ところが、英語が大の苦手。当時の点数は、なんと990点満点の248点でした。TOEICは4択問題。鉛筆を転がして当てずっぽうに回答しても、理論上は248点になるわけですから、僕の実力は実質的に0点ということ。まさに、絶望的な状況にあったわけです。
そんな僕が、どうしてF1への切符を手に入れることができたのか?
そのきっかけは、LFAにかかわっていたころのある出来事にありました。