その実践のひとつに、ビジネスにおけるProof Of Concept(概念検証)があげられる。Proof Of Conceptとはその名の通り、設定した課題や、それに対する解決策のアイデアが、ニーズに合っている、あるいは新たなニーズを掘り起こすようなものであることを、何らかの方法で検証することだ。勘違いしやすいが、必ずしもプロトタイプを作ることとイコールではない。インタビューで想定ユーザーに話を聞いたり、アプリで作りたい部分を人力で補って疑似体験させたりすることなども検証の方法である。

 「まごチャンネル」のユーザー体験ビデオは、そのイメージとしてわかりやすい例だろう。2015年にクラウドファンディングのMakuakeに登場し、開始50分で目標額を達成したこの商品は、スマホで子どもの動画や写真を撮るだけで、離れて暮らすご実家のテレビにすぐに届くというサービスである。

 興味深いことに、このユーザー体験ビデオには製品本体や操作説明がほとんど出てこない。しかし、その製品を中心にユーザーがどのように反応し、喜び、涙を流すかが、とてもよく表現されている。コンセプトを検証するというのは、製品の見た目形や機能ではなく、それを利用する人々の体験を掘り下げる作業である。

ボトムアップで企業内にGRITを育てる

 企業内でProof Of Conceptを実践することの効果について、Draper Nexus(ドレーパーネクサス)の北村氏は次のように語る。「大企業が新規事業に取り組もうとする時、そこには本来、企業として目指す将来像に対するビジョンが必要です。新規事業はそのビジョンを実現するための手段であり、ビジョンに対する情熱はGRIT(グリット)を産みます」。

「しかし、多くの企業がこのビジョンを曖昧にしている、あるいはビジョンから作りなおそうとして苦しんでいます。Proof Of Concept(概念検証)の実践はそれ自体ビジョンとまではいきませんが、現場の社員一人一人が目指すコンセプトを日々考えることで、ボトムアップで事業に対するビジョンを作っていける可能性につながると思います」。

 今の自分の行動は、コンセプトの検証につながっているのか。そもそも検証しようとしているコンセプトとは何なのか。検証した結果、考えていたことが正しければ次は何をするべきか。間違っているとわかったら何をするべきか。

 一人一人がProof Of Conceptを日々繰り返すこと、その小さな積み重ねは、企業の中にGRITを育て、将来の大きな違いを生み出していく、大切な要素のひとつであるだろう。

【参考資料】
1)成功できるベンチャーはなにが違うのか?我々ができること,Draper Nexus,2016年5月, http://drapernexus.com/jp/blog/svif
2)自分たちを信じてサポートしてくれた人たちのために最後までやりきりたい,Draper Nexus,2016年6月,http://drapernexus.com/jp/blog/mitch-kitamura-interview
3)まごチャンネル:https://www.mago-ch.com/