約500人のビジネスパーソンの肉食度、草食度を測定したところ、顕著な結果が出た。草食度の高い組織に肉食度の高い自分が入ったら、やりにくいことは目に見えている。相手の肉食度、草食度に合わせたコミュニケーションも必要だ。

サラリーマンの習性にも
「肉食系」と「草食系」がある

 管理職向けのマネジメント研修や営業職向けのセールス研修で、相手のモチベーションエリアを見極めて、それに応じたマネジメントやセールスの手法、話法を組み立てる演習を実施している。モチベーションエリアとは、人それぞれのやる気が上がりやすい領域のことで、私は現在、「目標達成」、「自律裁量」、「地位権限」、「他者協力」、「安定保障」、「公私調和」の6つのエリアに分けて捉えている。

一口にモチベーションと言うが、何にヤル気を感じるかは、実に人さまざま。そこを無視して働きかけてもマネジメントは失敗するだけだ

 たとえば、挑戦することでやる気が上がりやすい人のモチベーションエリアは「目標達成」だ。仕事を任されたいと思う人は「自律裁量」、より大きな仕事をすることに意欲を掻き立てられる人は「地位権限」というようになる。

 一方で、周囲の人と協調していくことが心地よい人は「他者協力」、安定しているかどうかに敏感な人は「安定保障」、公私のバランスがとれていることを何よりも優先する人は「公私調和」にモチベーションエリアがある。

 これら6つのエリアのうち、「目標達成」、「自律裁量」、「地位権限」の3つを「牽引志向」と名付け、肉食系と呼んでいる。

 一方、「他者協調」、「安定保障」、「公私調和」の3つには「調和志向」と名付けて、草食系と呼んでいる。

 私は、肉食か、草食かの違いは、良し悪しではないと考えている。

 組織の置かれている状況によっては、求められる志向が異なるし、環境変化によっても変わるからだ。

 これまでの演習経験をふまえると、同じモチベーションエリアや志向の人とは、コミュニケーションがしやすいようだ。何でモチベーションが上がるか、自分と相手が似ているから、そのエリアや志向に沿った手法や話法を、お互いに繰り出しやすいのだ。逆に言えば、明らかに異なるエリアや志向の集団の中に入ったら苦労することになる。

 そして、企業によって、肉食度の高いメンバーが集まったり、逆に草食度の高いメンバーが大勢を占めていたりする。たとえば草食の集団の中で、自分だけが肉食だったり、その逆だったりしたら、自分も周囲も苦労することが容易に想像できる。