8月19日のもう一つのディール
コミュニティストアの存在意義とは

 次に、北米のコンビニ・ビジネスを理解する上で、大切な点を解説したい。「コミュニティストア」の概念だ。

 クシュタールがセブンに友好的な買収を提案した同じ日、クッシュタールは、米スーパーのジャイアントイーグル傘下にあったゲットゴー・カフェ+マーケット(GetGo Café+Market)を買収したと発表した。ゲットゴーは、米国の5州で270店舗を運営するコンビニである。注文に応じて料理するメニューが豊富なこと、立地に合わせたさまざまな形態の店舗を持っているのが特徴だ。地元密着を強みとしており、クシュタールは買収に当たって「地元顧客とコミュニティにサービスを提供する GetGo の革新的なアプローチから学びたい」とコメントしている。

 日本人からすると意外かもしれないが、米国のコンビニは、標準化されているとは言い難い店舗群から成り立ち、地域のコミュニティストアとしての役割を果たしている。クシュタールが先のコメントを出した背景には、コンビニとは地元に密着した店である、という本来の在り方を大事にし、それを蹂躙するようなM&Aを良しとしない雰囲気が米国内にあるからだ。

 小売業態の一つであるコンビニは、品ぞろえなどにおいて国や地域によって特色があり、同じモデルをただ水平展開して他の地域に当てはめてうまくいくものではない。米国で、あるいは日本で発達したコンビニ文化やビジネスモデルが、そのまま他の国や地域で通用すると思ったら大間違いである。

セブンM&Aが8兆円規模の可能性も!クシュタールが是が非でも買収したがる無理からぬ事情テキサス州のセブンイレブン。日本とは異なり、地域ごと店舗ごとの特色がある(筆者提供写真)
セブンM&Aが8兆円規模の可能性も!クシュタールが是が非でも買収したがる無理からぬ事情テキサス州のセブンイレブン。日本で言うところの「コンビニ・イートイン」ができるテラス席(筆者提供写真)