「週150分の早歩き」で4年半寿命を延ばせる

テレビからネットに雑誌、書籍まで、世の中にはまことしやかな「健康情報」が、日々次から次に流れている。コレを食べると「やせる」「血液さらさらになる」などとテレビで放送されると、翌日にはスーパーからその食品が消えるといったことが繰り返されている。
だが、実際にはその情報の信頼度はバラバラで、何の科学的証拠もないものが「とても健康にいい」と喧伝されていることも少なくない。
では、いったい何を信じればいいのかと思ってしまう人も多いのではないだろうか。
そこで、ハーバードメディカルスクールの教授であり医師としても活躍する著者が、数十万人を何十年も追った大規模研究など、信頼性の高い膨大な研究の網羅的な分析によって明らかになったことを集め、「これだけは間違いなく『いい』と断言できる」という食物・習慣を抽出した。その内容を一冊にまとめたのが『ハーバード医学教授が教える健康の正解』だ。ここでは同書から「運動」の驚きの効果について論じた部分を特別に公開する。

「運動せよ」が医師として最良のアドバイス

 私が医師として患者に与えられる最良のアドバイスは、これだ。

「動いて、動いて、動き続けろ!」

 定期的に運動する人が元気で長生きすることは疑問の余地がない。

 売上が年間10億ドルを超える医薬品も珍しくないこのご時世に、まったくお金がかからず、それでいて超高価な処方薬に匹敵するほど効果の高いものがあるなんて、信じられないほどだ。公園を散歩するなどの簡単なことで、寿命を何年も延ばせるというのだ。

 ビタミンDを生成する日光と同じで、人生で最高のもののなかには、まったくお金をかけずに簡単に利用できるものがある。

 ニューヨーク・タイムズは、こんなふうに説明する。

「私たちの遺伝子が運動を好むように進化したことは、多くのエビデンスが示している。いいかえれば、先史時代には、体が強くなく、すばやく動けない人は生きられなかった。体力のある人だけが生き延びて子孫を残し、より『運動に適した』遺伝子を伝えた。だが現代の運動不足の生活では、そうした遺伝子がさまざまな悪影響をおよぼし、慢性疾患の原因になっているとする研究もある」

 こう考えるとわかりやすいだろう。

 もしも「運動」を丸薬や錠剤、飲み薬にして、瓶詰めにして売り出すことができたら、それはたちまち世界で最もよく処方され、最もよく売れ、最もよく効く薬になるだろう。

 しかもそれは完全に無料で、秋に落ち葉をかき集めたり、お気に入りのコーヒーを飲むために近所の喫茶店まで歩いたりするくらいの簡単なことなのだ!