テレビからネットに雑誌、書籍まで、世の中にはまことしやかな「健康情報」が、日々次から次に流れている。コレを食べると「やせる」「血液さらさらになる」などとテレビで放送されると、翌日にはスーパーからその食品が消えるといったことが繰り返されている。
だが、実際にはその情報の信頼度はバラバラで、何の科学的証拠もないものが「とても健康にいい」と喧伝されていることも少なくない。
では、いったい何を信じればいいのかと思ってしまう人も多いのではないだろうか。
そこで、ハーバードメディカルスクールの教授であり医師としても活躍する著者が、信頼性の高い膨大な研究の網羅的な分析によって明らかになったことを集め、「これだけは間違いなく『いい』と断言できる」という食物・習慣を抽出した。その内容を一冊にまとめたのが『ハーバード医学教授が教える健康の正解』だ。ここでは同書から、訳者あとがきを特別に一部を公開する。

「統計的エビデンス」からわかった驚くべきこと

 本書の著者サンジブ・チョプラ博士は25年ほど前のある日、ひとつの研究に目を奪われた。

 それは膨大な統計的エビデンスをよりどころとする研究で、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べ、肝障害を示す肝酵素のレベルが大幅に低く、しかもコーヒーを飲む量が増えれば増えるほどレベルは低くなるという、驚くべき因果関係を示唆する論文だった。

 ハーバードメディカルスクールの肝臓専門医として、世界全体で患者が10億人ともいわれる慢性肝疾患の最先端の治療法を研究してきたチョプラ博士は、こんなに身近なところにカギが潜んでいる可能性に大きな衝撃を受けたという。

 博士はこれをきっかけに、生活習慣や環境と病気との因果関係を推定する疫学研究に興味をもち、信頼性の高い情報を多くの人に伝えられないかと考えるようになった。

 疫学研究のなかでも、とくに大規模な集団(コホート)を一定期間にわたって追跡する、時間と手間のかかる研究のことをコホート研究という。数十万人規模の集団を何十年もかけて調査することも少なくない。

 対象者を選び、あらかじめ健康と関連がありそうな要因(食生活や生活習慣、環境など)を調べておき、その後健康面でどのような変化があったかを追跡することによって、それぞれの要因と病気のリスクとの関連に光を当てようとする。「なぜ」そのような関連があるのかを示すものではないが、それでもすばらしい知見が得られることはまちがいない。

 とくにこの手法は、特定の要因と病気に罹患した時期の前後関係がはっきりしているため、バイアスが小さく、情報が多く得られ、因果関係を示すエビデンスとしてとくに説得力が高いというメリットがある。

 チョプラ博士は、主にこうしたコホート研究とそのメタアナリシス(過去に行われた信頼性の高い複数の研究結果を定量的に統合して改めて分析する手法)をベースとする、エビデンスレベルの高い疫学研究によって健康効果が強力に裏づけられている習慣を「5つ」選び出した。コーヒーやビタミンDの摂取などだ。これらを「ビッグファイブ」と名づけ、みずから実践するとともに、家族や医師仲間、患者さん、講演の聴衆に広く勧めているという。それをまとめたものが本書だ。

「これは健康にいい」という研究について、雑誌やネットでよく目にするという方は多いだろう。だが本書のよさは、ハーバードメディカルスクールおよび附属病院の高名な肝臓専門医で、医師の教育にも大きな実績があり、数々の賞によって功績を称えられているチョプラ博士が、とくに信頼性の高い研究を厳選して、お墨付きで紹介しているという点にある。

 チョプラ博士自身は、本書のメソッドを「なまけ者の健康法」と呼び、シンプルな点にこそそのよさがあるという。

 難しい方法や手順を覚える必要はまったくない。誰でもいますぐに取り入れて、長く続けることができる。また、すでに「ビッグファイブ」のいくつかが習慣になっているという方も、このを読んでその効果を理解すれば、さらに効果的に継続できるだろう。

 これらの習慣は副作用もない。万が一健康効果を示す膨大な数の研究がすべて誤りだったとしても損失は少ないが、仮に一部でも正しければ、ビッグファイブを取り入れないことは大きな損失になるとチョプラ博士は力説している。

(本原稿は書籍『ハーバード医学教授が教える健康の正解』のあとがきより一部編集して掲載しています)