テレビからネットに雑誌、書籍まで、世の中にはまことしやかな「健康情報」が、日々次から次に流れている。コレを食べると「やせる」「血液さらさらになる」などとテレビで放送されると、翌日にはスーパーからその食品が消えるといったことが繰り返されている。
だが、実際にはその情報の信頼度はバラバラで、何の科学的証拠もないものが「とても健康にいい」と喧伝されていることも少なくない。
では、いったい何を信じればいいのかと思ってしまう人も多いのではないだろうか。
そこで、ハーバードメディカルスクールの教授であり医師としても活躍する著者が、信頼性の高い膨大な研究の網羅的な分析によって明らかになったことを集め、「これだけは間違いなく『いい』と断言できる」という食物・習慣を抽出した。その内容を一冊にまとめたのが『ハーバード医学教授が教える健康の正解』だ。ここでは同書からナッツについて論じた部分を特別に一部を公開する。
多く食べるほど「寿命」が長くなる
いまやさまざまな研究者が、ナッツとがんとの関連性を調べ始めている。たとえばピスタチオが肺がん予防に何らかの効果があることが、動物実験で確認されている。
実際、全体として見れば、ナッツ摂取に寿命を延ばす効果があることを、多くのエビデンスが示しているように思われる。
ダナ・ファーバーがん研究所がブリガム・アンド・ウィメンズ病院およびハーバード大学公衆衛生大学院と共同で行い、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』で発表した研究では、1つかみのナッツを定期的に食べる人は、まったく食べない人に比べて、30年間の全死因死亡率が20%低かった。
この特大規模の研究は、アメリカ国立衛生研究所とナッツ業界から資金提供を受けて行われたもので、看護師健康調査の女性7万6464人から30年かけて収集されたデータと、医療従事者追跡調査の男性4万2498人から24年間で得られたデータを分析した。
その結果、「すべての分析で、ナッツの摂取量が多い人ほど、30年間の追跡期間中の死亡率が低かった」と、論文の筆頭著者であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院のイン・バオは述べている。
ナッツを週1回未満しか食べない人でも、まったく食べない人に比べれば死亡率は7%低く、毎日食べる人は20%も低かった。がん、心臓疾患、呼吸器疾患による死亡率に大幅な低下が認められたほか、ほぼすべての分類で死亡率は低かった。
どの種類のナッツを食べるかは問題ではないようだった。種類によらず、ナッツを食べる人は寿命がより長く、また食べる量が多いほど寿命は長かった。バオが認める通り、なぜそうなるのかはまだ解明されていない。「正確な生物学的メカニズムは、現時点ではわかっていない」
それ以前の研究でも、同様の結論が出ていた。
ロマ・リンダ大学によるセブンスデー・アドベンチスト研究は、当初の心臓研究の継続研究として、男女3万4192人を12年にわたり追跡した。2001年に『アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン』に発表された結果は、ナッツの常食には平均余命を1.5~2.5年延ばす効果があったと結論づけている。