テレビからネットに雑誌、書籍まで、世の中にはまことしやかな「健康情報」が、日々次から次に流れている。コレを食べると「やせる」「血液さらさらになる」などとテレビで放送されると、翌日にはスーパーからその食品が消えるといったことが繰り返されている。
だが、実際にはその情報の信頼度はバラバラで、何の科学的証拠もないものが「とても健康にいい」と喧伝されていることも少なくない。
では、いったい何を信じればいいのかと思ってしまう人も多いのではないだろうか。
そこで、ハーバードメディカルスクールの教授であり医師としても活躍する著者が、信頼性の高い膨大な研究の網羅的な分析によって明らかになったことを集め、「これだけは間違いなく『いい』と断言できる」という食物・習慣を抽出した。その内容を一冊にまとめたのが『ハーバード医学教授が教える健康の正解』だ。ここでは同書からコーヒーについて論じた部分を特別に一部を公開する。

たくさん飲む人は「いいこと」をしている

 スターバックスが華々しい成功をおさめ、それに続けとばかりに全米に2万5000軒ものコーヒーショップがオープンし、特別な淹れ方やブレンドのコーヒーが手に入りやすくなり、また手軽なコーヒーメーカーができたおかげで、かつて地味だったコーヒー業界は、食品・飲料業界のなかでも成長著しい分野になり、いまや年間数十億ドル規模の市場に成長している。

 地元のコーヒーショップに毎日立ち寄るのを、私ほど楽しみにしている人もいないだろう。コーヒーをテイクアウトするだけでなく、友人たちと顔を合わせ、言葉を交わすのが楽しいのだ。

 だがいちばん大切な理由のためにコーヒーを飲む人は、ほとんどいない。コーヒーは、じつは体にとてもよいのだ。

 医師として、また肝臓専門医として、私はそう断言できる。

 実際、コーヒーほど健康的な飲み物はないだろう。でも信じない人が多い。私がそういうと、ジョークと勘ちがいしてオチを待っている人がいるほどだ。

 肝障害について講演をするとき、いつも「コーヒーを1日2杯以上飲む人はいますか」と聞くことにしている。男女とも、ほとんどの人が手を挙げる。

「なるほど」といって、こう質問する。「では、4杯以上飲む人は?」

 みんな次々と手を下ろし、そんなにコーヒーを飲む人の顔を見てやろうと、周りを見回し始める。

 最後に「1日6杯以上飲む人はいませんか?」と尋ねると、会場がざわめき、それから度胸のある数人が、うしろめたそうにゆっくり手を挙げる。そこで私は聴衆にいうのだ。

「知っていますか?コーヒーは健康によいのです!たくさん飲む人は、体にとてもよいことをしているんですよ」

 それなのに、コーヒーは体によいどころか、害があると思っている人がほとんどだ。

 昔はコーヒーの飲みすぎは、心臓発作に始まり、出生異常、膵がん、骨粗鬆症、体重増加、高血圧、流産までのあらゆる健康障害と関係があると思われていた。

 たしかに不眠症や震え、多少の血圧上昇、胸やけを覚える人はいるし、トイレが近くなるのは事実だ。だからコーヒーを飲む量を抑え、体によくないからとがまんしている人が多い。どこへ行ってもこんなことをいわれる。「先生、昔は1日2杯飲んでいましたが、もうほとんど飲んでいません。カフェインが入っているし、体に悪いんでしょう?」

「コーヒーは体に悪い」というのは誤解だというエビデンスが山のようにあり、毎日のように新しい研究成果が積み上がっているのに、信じようとしないのだ。

 実際、ほとんどの人はコーヒーに重病を予防する効果があることを知りもしないし、事実を知ってもなお疑わしげで、信じられないという顔で聞き返してくる。

「コーヒーが紅茶より体によいですって?コーヒーがいろいろながんの発症リスクを下げるんですか?胆石や虫歯、肝硬変、認知症のリスクさえ減らすですって? 先生、あなた大丈夫ですか?」