運動は超強力な「クスリ」である
ハーバードとスタンフォードのメディカルスクールが行い、2013年にイギリスの医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に掲載された共同研究は、33万9274人を対象とした305件のランダム化比較試験を分析し、運動と薬物療法の有効性を比較し、また対照群とも比較して、死亡率への影響を検証した。
その結果、2型糖尿病、心不全、慢性脳卒中、慢性心臓疾患という、生命を脅かす4つの疾患や症状について、運動と薬物療法のあいだに統計的に検出可能な差が認められなかった。
研究責任者のフセイン・ナシによると、彼らが驚いたのは「運動に、重篤な慢性疾患患者に対する強力な救命効果が認められた」ことだ。「また意外にも、身体活動がほかの多くの疾患におよぼしうる効果がほとんど解明されていないことがわかった。私たちは運動の健康効果を知らないことで損をしているのかもしれない」
定期的な運動には、早期死亡リスクを下げ、体重管理を助け、心臓疾患や2型糖尿病、脳卒中、認知低下、うつ、特定の種類のがん、骨粗鬆症と骨折、性的不能のリスクを低下させる効果があることが、研究で示されている。
いちばんわかりやすい効果は、減量と体重維持だろう。食事制限なしの運動だけで劇的にやせることはないが、定期的な運動で数キロ減らすだけでも、健康状態を大いに改善することができる。
アメリカは肥満の急速な増加という、大きな問題を抱えている。そして太りすぎの人はそうでない人に比べて病気やケガをしやすく寿命も短いことは、多くの研究が示す通りだ。
私は肝臓専門医として講義をするとき、いまやアメリカでは非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)が最も一般的な肝疾患なのだと説明している。
肥満と2型糖尿病の増加が明らかに影響をおよぼしているこの疾患をもつ人は、アメリカには約4000万人いると推定される。NAFLD患者は15〜20%の確率で肝硬変になり、合併症を発症すれば肝移植が必要になることもある。
アメリカでは今後10年以内に、肝硬変およびNAFLDに伴う合併症が、肝移植の主な適応疾患になると考えられている。