なぜ企業で働く人は、ミドル・シニア期(40・50・60代)に入ると、言い知れぬ「停滞感」を抱き、職場での「居場所」を失っていくのか? 経験談や持論が渦巻くこの領域に、ついに「4700人のビッグリサーチ」による"科学のメス"が入った――。

□ 42.5歳の「壁」を軽々と超える人は、何をしているのか?
□ 50代前半の「霧」のなか、職場内で「居場所感」を得るには?
□ 60代・定年後に「上昇気流」を呼び寄せる人の共通点とは?

史上最大レベルの大規模データに基づき、会社人生を「仕切り直す」22の心構えを導き出した最新刊『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』のなかから、一部抜粋してお送りしよう。

なぜ、ベテラン社員ほど「居場所感」を失い、「社内孤独死」するのか?

「あれ? なんか…チーム内で浮いてる?」

20代の新人・小林さんが、同じチームの大川さんに話しかけています。
大川さんは50代のミドル・シニア社員。最近まで別の部署で課長を務めていましたが、ポストオフ制度により管理職を外れて、いまのチームに移ってきました。ここでは最年長のベテランです。

「大川さん、失礼します。部長からA社への提案資料をまとめるよう言われたんですが……たしか大川さんって、A社の競合であるB社の案件を以前に担当されていましたよね? もしよろしければ、そのときの資料を見せていただけませんか?」

小林さんが言うとおり、大川さんはかつて、業界最大手であるB社の案件を担当する、営業部きってのエース社員でした。久しぶりに若手から頼りにされた大川さんも、決して悪い気はしていないようです。

「ああ、その件ね。あのころはね……」

かつての経緯からはじまり、他社とのコンペを勝ち抜くまでの苦労話や工夫ポイントなどなど、ふだんは寡黙な大川さんには珍しく、次から次へと当時のエピソードが飛び出してきます。しかし、ふと小林さんのほうを見ると、何か言いたげな表情をしています。

「ああ、そうだ。資料だったね。はい、どうぞ!」

大川さんは内心「(ちょっと武勇伝が過ぎたかな……)」と感じましたが、資料を受け取った小林さんが笑顔でお礼を言いながら去って行ったのを見てホッとします。
しかし……その後、小林さんが大川さんのところに相談に来ることはありませんでした。それどころか、最近の大川さんは、チーム内でもなんとなく所在なさげにしています。
たしかに目の前に膨大な仕事はあって忙しいのですが、チームの一員として「なくてはならない存在」かと言われると、なかなか自信を持っては答えられないといった感じです。

会社員は自ずと「孤独」になる

前回見た「年下とうまくやる」という行動特性と同じくらい無視できないのが、「組織・部署・チーム内でのつながり」です。

とくに、「同期カルチャー」が色濃く残っている日本企業では、ミドル・シニア期を迎えた人が自ずと孤独になっていく構造があります。同期の「横並び意識」が明確だった若手時代が過ぎ、40代に差し掛かると、そこにはいつのまにか「差」が生まれています。

順調に昇進する人と一般社員に留まる人、部下がいる人といない人、結果を出し続ける人と結果が出なくなる人――そのような「違い」が生まれることで、われわれはいつのまにかお互いに疎遠になってしまうのです。

そして、「横」のつながりが強い分、少し世代が違うだけで、なかなか「縦」のコミュニケーションが取れない。この結果、われわれはいつしか孤独になり、大川さんのように職場内の居場所を見失っていくわけです。