停滞感は「居場所感」が決める

データからも、ミドル・シニア期を迎えた人は、「チームのなかに自分の居場所がある」という感覚を持ちづらい実態が見えてきました。この感覚を居場所感と呼ぶことにしましょう。[図表4-1]をご覧ください。

職場のなかに「居場所」はありますか?

このとおり、6~7割前後の人が、職場内に自分の「居場所」を見出せないでいるようです。
もっとも、「仮に、居場所がないと感じても、淡々と仕事をこなしていけばいいのではないか」という考え方もあるでしょう。

ここで見逃せないのが、居場所感が本人のジョブ・パフォーマンスにも影響を与えるという点です。
[図表4-2]は、居場所感をいくつかの回答項目をもとに尺度化し、ミドル・シニアの5タイプ別で比較した結果です。

「居場所感」をタイプ別で比較する

やはりジョブ・パフォーマンスが高いタイプほど、居場所感も高くなる傾向があります。逆に、最もパフォーマンスが低い「不活性タイプ」の居場所感は、「ハイパフォーマータイプ」の半分以下にとどまっています。

なお、「居場所感」という本人の主観に基づいた感覚だけでなく、人材間のネットワーク(これをソーシャル・キャピタル[社会関係資本]といいます)が、昇進速度や勤続年数など個人のパフォーマンスにも影響するということは、別の研究でも指摘されています。

個人の能力を引き出し、結果としてチームや組織の結果にもつなげていくためには、やはり企業内のネットワークを堅固にし、居場所感を高めていくような行動が必要になります。

日本の伝統的な企業においては、個人がミドル・シニア期を迎えると、このような社会的つながりが断ち切られてしまい、十分にパフォーマンスが発揮できない状態に陥ることがあります。いわゆる「窓際社員」、または、ちょっと過激な表現かもしれませんが、いわば社内孤独死とでも呼べる状況です。

これは企業からしても大きな機会損失でしょうし、何より、本来持っている知識・技術を発揮できないまま定年退職を迎えるのは、本人にとっても非常にもったいないことだと思います。
それでは、われわれは「居場所」を見つけるために、何をすべきなのでしょうか?

「親しみやすい」だけでは「社内孤独死」は免れない

前回の記事の繰り返しになりますが、終業後に飲みに誘ったり、社内で雑談の機会を増やしたりといった行動だけでは、自走力を高めることにはつながりません。

とはいえ、マイナス効果があるわけでもないので、そうした交流をすべてやめる必要もないでしょう。とくに若い世代は、ややもすると年上の世代を敬遠しがちですから、こちらから歩み寄ってざっくばらんなコミュニケーションを取ることには、それなりの意味があると思います。

他方で、そうした交流だけで居場所感を高められるかというと、それはやはり甚だ疑わしいと言わざるを得ません。