はやりの理論を聞きかじっても組織が良くならないワケ、取り組むべき王道は?組織改革の王道とは? Photo:PIXTA

「在宅勤務も長くなり、社員が会社の方向性が見えなくなっている。これまでの指示命令型の組織はもう機能しない。これからは、会社と自分の使命を深く理解し、自ら意思決定し、かつ互いを尊重して必要なときには自発的に調整される “ティール組織” をこそ、わが社は目指すべきだ」――とオンライン会議で力説している経営幹部を見た。

はやりの理論を
適用しても意味がない

 2018年~19年あたりは、このティール組織の話題があちらこちらで盛り上がっていた。意思決定に関する権限と責任を全構成員に与え、一人一人が自ら設定した目標や動機によって生まれる力を組織運営に活用する「自主経営」。組織内の心理的安全性を高め、構成員の個性や長所が発揮できる環境を整えることで、チームが生み出す力を最大化する「全体性の発揮」。組織の目的、組織が構成員に求めることなどを全員が意識し、「組織の存在目的の実現に焦点を当てる」ことなどが、その特徴とされた。

 しかし、ティール組織は一つの理想形として話題になりつつも、実務面で大きな広がりを見せることはなかった。その理由は『ティール組織』の著者フレデリック・ラルー自身がそう言っているように、ティール組織は、すべての企業にとって目指すべき組織形態でなく、かつ簡単に実現することができないからである。

 したがって、優れたコンセプトであり、かつ成功例もそれなりにあるにもかかわらず、一種の“はやりもの”として扱われ、今や忘れられつつある。冒頭の会議でも、参加者の反応はとても冷ややかだった。「このたいへんな時期に何をふざけたことを言っておるのだ。流行は終わったのだ」――悲しいかな、こんな感じだった。