しかしながら、どんな企業でも目指すことができ、かつ、やればほぼ必ず成果が読める職務満足の理論は存在する。創業から50年たった今なお、高い活性度を維持しているリクルートの組織について、リクルート創業メンバーの一人である大沢武志氏が書いた『心理学経営』(PHP研究所、1993年、Kindle版などで入手可能)には、このような記述がある。
「かつてリクルートという企業集団は、若者が生き生きと仕事をしている“不思議な新人類会社”として注目を浴びたが、その理由の多くを、ハーズバーグの動機付け要因や、職務充実のための5つの職務次元などのなかに見いだすことができるように思う」
ハーズバーグの動機付け要因はよく知られている理論で、直感的にもわかりやすいが、職務充実のための5つの職務次元(ハックマン&オールダム)は、それほど知られていない。しかし、これほど効果的で、その気になればどんな職場でも実施可能な優れものの理論はそれほどない。
仕事のモチベーションと
生産性が上がる万能理論とは
以下、大沢氏の「心理学的経営」を引用、参照しながら説明したい。仕事への内的動機づけが高まる職務の要素を、ハックマンとオールダムは職務設計の次元として整理している。これが「職務設計の中核5次元」といわれるもので、職務特性理論としてなかなかよく整理されたわかりやすい仕組みとなっている。
第一の次元:スキルの多様性
その仕事を遂行するために、どんな能力が求められるかが、モチベーションにつながる。「必要とされる能力や技能が多様であればあるほど自分の仕事は有意義で価値があり、重要だと感じる」(『心理的経営』から)
第二の次元:タスクアイデンティティ
自分の仕事がどういう位置づけにあるのかによっても、モチベーションは変わる。「大きな仕事の一部にすぎないのか、はじめから終わりまで一貫して携わることのできる一定のまとまりのある仕事なのか。当然、自分の仕事としてまとまりのある自覚を持てる仕事のほうが、アイデンティティが高まるであろう」(同上)
第三の次元:仕事の有意義性
その仕事は、周囲にどれほどの影響をもたらすものなのか。どれほどの意味を持っているのか、という点だ。「こうした仕事の意味が自覚され、自分の仕事は価値があり、重要だと感じるほど、内的動機づけは高まるであろう」(同上)
第四の次元:自律性
どれだけ裁量権を持って、仕事を進められるかどうか。「自由裁量の範囲が大きければ大きいほど、自分の仕事の結果に責任を感じることにもなり、内的な動機づけが高まるというのが自律性の次元である」(同上)
第五の次元:フィードバック
最後に、自分の仕事の成果を確かめることができるかどうか、という点だ。言われたことをこなすだけなのか。あるいは、上司や同僚を通じて、自分の仕事がうまくいっているかどうかを知ることができるのか。モチベーションは大きく変わってくる。