離島と飛行機写真はイメージです Photo:PIXTA

鹿児島県・奄美大島が世界自然遺産に登録された。2017年からLCCが就航したことで、奄美の来訪者は大幅に増加した。では離島の側から見て、航空便が増えたことは、どのような意味があるのだろうか。実は観光振興以上に、重要な意義がある。一方、東京都・八丈島と小笠原諸島を比べると、別の視点もありそうだ。(桜美林大学航空・マネジメント学群教授 戸崎 肇)

離島の観光客急増は
し尿処理が間に合わず水質汚染も

 7月26日、鹿児島県・奄美大島が、同・徳之島や沖縄島北部・西表島とともに世界自然遺産に登録された。東京オリンピック開催中での発表となったため、全国的なニュースとしての取り扱いは小さくなってしまったが、日本にとっての経済的価値から見れば、奄美大島の決定の方がはるかに大きな価値を持ち得るものだ。オリンピックはあくまでも一過性の経済効果をもたらすのに対し、世界自然遺産に指定されれば、今後多くの観光客の来訪による経済効果が期待できるからだ。

 ただ、来訪者が増えると、自然環境に対する負荷も高まり、「売り物」としての自然環境が損なわれてしまう恐れもある。事実、同じ鹿児島県の屋久島や、中国の九寨溝のように、これまで世界自然遺産に指定された結果多くの観光客が訪れることによって、し尿処理が間に合わなくなったり、水質が汚染されたりして自然保護に悪影響が出たケースが多く見られる。

 今回の自然遺産への登録決定以前から、奄美大島を来訪する人の数は大幅に増加してきていた。それは主に、2017年3月、LCCのバニラ・エア(現ピーチ・アビエーション)が東京(成田国際空港)と大阪(関西国際空港)から奄美大島への路線を就航させたからである。

 現在でこそ、コロナ禍の影響によって客足は鈍っているものの、「バニラ特需」によって、一説には年間42億円ともいわれるほど大きな経済効果を得ていた。ちょうどインバウンド旅客も急激に増加していた時期でもあり、奄美大島の国際的知名度を上げるのに貢献したことは、今回の登録の一助となっただろう。

 逆にバニラが飛んでいなければ、東京~奄美大島は日本航空(JAL)の単独路線のままであり、離島路線は採算性が取りにくいがゆえ航空会社間の競争が起こりにくく、割高となり、観光需要はそれほど伸びなかったであろう。

 では離島の側から見て、航空路線があることは、どのような意味があるのだろうか。実は観光振興以上に、重要な意義がある。「国を守る」ことにつながるのだ。