インテルがアリゾナ州に所有している半導体工場。2021年3月に2兆円を超えるコストをかけて新巨大工場2棟を建設することを発表している(Photo:Intel)インテルがアリゾナ州に所有している半導体工場。2021年3月に2兆円を超えるコストをかけて新巨大工場2棟を建設することを発表している Photo:Intel

パソコンや車、果ては給湯器やインターフォンまで、さまざまなものの不足や納期遅れが「半導体不足」と説明されていた2021年。年が明けた今も、半導体不足の状況は世界的に続いている。そもそもなぜ、半導体が足りなくなるのか。そして今後、いつ頃解消するのだろうか?(テクニカルライター 笠原一輝)

 2021年は、世界規模で半導体不足が声高に叫ばれた年だった。半導体産業が成立してから既に半世紀以上が経過しており、これまでも半導体逼迫(ひっぱく)と呼ばれる事態は何度も起こってきた。しかし、その影響はいわゆるIT産業(パソコンやスマートフォン、データセンターのサーバーなど)にとどまっており、広く一般消費者の生活に影響を及ぼすということは少なかった。

 しかし今回発生している半導体逼迫は、従来と事情が異なる。IT機器だけでなく、自動車、インターフォンや給湯器などの一般消費者の生活に影響を与える機器までも、半導体逼迫で納期が延びたり不足したりしているのだ。例えば、自動車では従来なら納期1カ月で納品できていた車種の納品が数カ月になるなどの影響が出ており、工場の生産が一時的に停止するなど大きな影響が出ている。

 こうした半導体逼迫はなぜ発生し、今後いつどのようにして解消に向かうのか?本記事ではそのあたりをひもといていこう。

さまざまな製品のパーツが
デジタル化、IoT化してきた

 冒頭でも述べたとおり、従来の半導体逼迫とは違い、最近ではその影響が白物家電や自動車などに広がって、幅広い製品に影響が出ている。その最大の要因は、こうした製品がIoT(Internet of Things、モノのインターネット)と呼ばれるインターネット接続機能を搭載したり、デジタル回路により機能が実現されたりするようになり、基本的な機能を実現するために多数の半導体が利用されるようになっていることによる。

 例えば自動車であれば、従来はアナログメーターだったものが液晶ディスプレーを使ったデジタルメーターに変わってきた。さらに通信機能も付いて、いわばメーターそのものがスマートフォンのような機能を備えるようになってきている。こうした部品それぞれに半導体が利用されているため、それが足りなくなると商品が生産できなくなってしまうのだ。