GAFAと呼ばれる米IT大手が半導体の“自前路線”を加速させている。主力サービスや製品の“心臓部”強化のために巨額の投資を惜しまない。データセンター向け半導体で自前路線の先鞭をつけた米グーグルが、独自開発を決断した理由は、ある「社内予測」が決め手だった。特集『総予測2022』の本稿では、GAFAの半導体戦略と翻弄される半導体メーカーの行方を予想する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
アマゾン、グーグルが本腰を入れる
データセンター向け「自前」半導体
新製品の目玉は、独自設計の半導体――。2021年に顕著になったGAFAのこのトレンドは22年も続くだろう。
12月1日、米アマゾン・ドット・コムのクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」が最新の取り組みを披露する開発者向けイベント「re:Invent」。
AWS前CEOだったアンディ・ジャシー氏のアマゾンCEOへの昇格に伴い、AWSの新CEOに就任したアダム・セリプスキー氏が、基調講演で真っ先にアピールした新製品は独自設計の半導体「Graviton3」だった。
「データ処理のコストパフォーマンスを高めるためには、シリコンの領域にまで深入りする必要があった」と、セリプスキー氏はAWSが18年から自社開発の半導体を投入している背景を説明。第3世代となるGraviton3は、前世代と比べて演算性能が最大25%向上した一方で、「消費電力は60%削減できた」と力説した。
加えて、機械学習に特化した別の半導体「Trainium」が使えるクラウドサービスも発表。用途に応じて最適な半導体を投入していく姿勢を鮮明にした。
データセンター向け半導体の自社開発に先鞭をつけたのは米グーグルだ。16年に機械学習に特化した「TPU」を発表した。
グーグルのある幹部によれば、半導体の独自設計の本格的な検討を始めたのは13年ごろだという。それは、ある一つのシミュレーション結果がきっかけだった。