【ニデック応援団リスト】永守氏の“株価至上経営”を助長した大株主60社公開!蜜月から一転、距離を置く「金融3社」とは?Photo:SOPA Images/gettyimages

永守経営の暴走は、創業者・永守重信氏一人の問題ではない。異変を察知しながら沈黙し、礼賛を続け、結果として暴走を支えてきた「共犯者」が存在していた。御用アナリスト、忖度メディア、そして市場関係者――。ニデックには、経営を監視するどころか、成功物語を演出し続けた「応援団」がいたのだ。特集『永守ニデック 最終審判』の#5では、永守イズムを助長してきた「ニデック応援団リスト」を公開する。さらに、不適切会計問題の発覚後、水面下でニデックと距離を取り始めた金融機関3社の実名にも踏み込む。(ダイヤモンド編集部論説委員 浅島亮子)

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御用アナリスト、忖度メディア、社外取…
永守経営の暴走を許した「ニデック応援団」

 電撃退任したニデック創業者の永守重信氏は、経営幹部に対し、次のようなメッセージを突き付けて厳しく指導してきた。

「私への報連相(報告・連絡・相談)は、何しろ早くが原則である。創業者は、猜疑心が強いので、注意が必要である。議論はおおいに結構であるが、重要決定決裁は私がやることを忘れないことだ」

「私が最も重視している経営指標は、相対業績であり、株価と時価総額のランキングである。だから、こうした実績を上げてからモノをいうことがキーとなる。創業者が喜ぶ報告をたくさん報告してくれたら信用と信頼を増していく」

 この言葉が示すのは、数字、そして株価を絶対視する価値観だ。そして、自身が最高意思決定者であることを強調した上で、自分を喜ばせる報告を持ってくるように示唆している。こうすることで、永守氏は執拗なまでに数字達成を求める強権的な経営で、ニデックを成長軌道に乗せてきた。

 永守氏には、二つの顔があった。ビジネスの最前線で陣頭指揮を執る経営者としての顔。もう一つは、ニデック株式11.69%を保有する筆頭株主、オーナーとしての顔である。

 高成長が続き、株価が上昇気流に乗っている間は、この「二重支配」は好循環として機能した。だが、成長に陰りが見えた瞬間、その構造は一転して悪循環へ変わってしまう。少なからぬ経営幹部が萎縮し、異論は封じられていった。

 象徴的なのが、2022年以降、経営方針を巡って永守氏と対立した関潤氏の実質的な解任だ(詳細は特集『京都企業の血脈』の#2『スクープ!日本電産“社長解任”全真相【前編】、永守会長が関氏に突き付けた「2通の通知書」の中身』参照)。関氏退任を発表した22年9月の記者会見で、永守氏はアナリストやメディアに向けてこう呼び掛けている。

「株は今が買いです。大底です。私と小部(博志社長。当時。現在は会長)が必死で業績を立て直す。前任者(関氏)が残した負の遺産もあり、すぐにV字回復とはいかないかもしれないが、必ず改善させる。外国人投資家にも、今日の私の話を正しく伝えてほしい」

 経営が混乱を極める最中、自らが株を推奨し「今が底値である」と言い切っている。それにもかかわらず、この発言に正面から異を唱える声はほとんど上がらなかった。国内大手証券や外資系大手証券の看板アナリストたちは、実態とはかけ離れた目標株価を掲げたまま「買い推奨」を継続した。結果として株価は下げ止まらず、当時からは半値以下、21年のピークと比べれば3分の1未満の水準まで下落している。

 こうした状況下で、持ち上げ役は一部の御用アナリストにとどまらなかった。忖度メディアもまた永守氏を称揚し、過去の決算説明会では予定調和の質疑応答が繰り返されてきた。この構図では、経営に対する健全なチェック機能など働くはずもない。

 社外取締役も歯止めにはならなかった。社外取は官僚や識者、弁護士が中心で、実業経験者は乏しい。経営を実効的に監視する体制とは言い難かった。

 そして、最後のとりでである株主も、筆頭株主が永守氏本人という構造の下で、暴走を止めるどころか株価至上主義をむしろ助長してきた。

 永守経営の暴走を、結果として支えてきたのは誰だったのか。次ページでは、門外不出の「ニデック応援団60社リスト」を大公開する。さらに、不適切会計問題の発覚後、水面下でニデックと距離を置き始めた「金融3社」の実名にも踏み込む。