ニデックの永守重信グローバルグループ代表(写真右)と岸田光哉社長は第三者委員会の調査対象になっている Photo:Bloomberg/gettyimages
不適切会計問題で大揺れのニデック。その全容解明を目的に設置された第三者委員会の調査が、大詰めを迎えている。ダイヤモンド編集部は、調査協力を求められたニデック元幹部らへの取材を通じて、会計問題の核心に迫る衝撃的な証言を得た。浮かび上がったのは、巨額の減損処理が長年にわたり先送りされてきた可能性だ。このプロセスに、永守重信・グローバルグループ代表はどのように関与していたのか。特集『永守ニデック 最終審判』の#1では、元幹部の証言を基に不適切会計の実相を解き明かしていく。同時に、第三者委員会が見据える「着地点」を大胆に読み解く。(ダイヤモンド編集部論説委員 浅島亮子)
不適切会計の究明作業が本格化
第三者委が歴代幹部に「調査依頼」を送付
1973年の創業以来、最大級の危機に直面するニデック。不適切会計の実態解明を目的に設置された第三者委員会の調査が、いよいよ佳境に差し掛かっている。
調査の対象は、永守重信グローバルグループ代表(取締役会議長)や岸田光哉社長、佐村彰宣最高財務責任者(CFO)といった現役経営陣にとどまらない。不適切会計の認定や“意思決定のメカニズム”を洗い出すため、歴代の経営陣やグループ幹部にも幅広く協力が求められているようだ。
実際に、第三者委員会の平尾覚委員長(西村あさひ法律事務所の弁護士)のメールアドレスと、ニデック事務局の連絡先を記した封書が、複数のニデック関係者に送付されている。ダイヤモンド編集部が調査依頼を受けた元幹部らに接触をしたところ、ある元中枢幹部から、会計問題の核心に迫る「重要な証言」を得た。
その中身に踏み込む前に、まずはニデックの不適切会計問題が表面化した経緯を整理しておこう。
きっかけは、今年5月のこと。発端は、海外子会社における関税問題の影響で、監査報告書を期限内に受領できないと公表したことだった。
これを受け、6月には2025年3月期の有価証券報告書の提出延期を発表。7月には、26年3月期第1四半期決算の開示を延期した。
しかし調査を進める過程で、ニデックテクノモータの中国法人において2億円の不適切な会計処理されていた可能性が浮上し、ニデックは監査等委員会の監督の下で調査を実施。その結果、ニデック本体やグループ会社の経営陣の関与や認識の下、「資産性にリスクのある資産について、評価減の時期を恣意的に検討していた」とも受け取れる不適切な会計処理が行われていた疑いが判明した。これを受けてニデックは9月、会社から独立した第三者委員会を設置した。
混乱は収まらない。9月末に25年3月期の有価証券報告書を関東財務局に提出したが、ニデックの会計監査を担当するPwCジャパンは「意見不表明」とした。続いて10月末には中間配当の無配を決定するとともに、期末配当予想と連結業績予想を未定として、自社株買いも中止。ついに10月末には、日本取引所グループから「特別注意銘柄」に指定された。これにより1年後に改善計画が不十分と判断されれば上場廃止に至るリスクもある。
今回の不祥事を受け、「世界ナンバーワンの総合モーターメーカー」を掲げて急成長してきたニデックの時価総額は、2021年に8兆円超のピークを付けたものの、足元では約2.4兆円まで急落した。
話を元に戻そう。
前述の証言者は、日産自動車出身の関潤氏が社長を務めていた20年4月から22年9月当時のニデック中枢幹部である。永守代表が後継者として招へいした関氏は、経営方針を巡る対立の末、関氏は事実上の解任に追い込まれた(解任の経緯については、特集『京都企業の血脈』の#2『スクープ!日本電産“社長解任”全真相【前編】、永守会長が関氏に突き付けた「2通の通知書」の中身』参照)。
この元幹部が明かした内容は、極めて衝撃的なものだ。「不適切会計にはいくつかの手法が考えられるが、金額ベースで最もが大きいのは減損の先送りではないか。その規模は、1000億円を優に超えているーー」。
減損とは、本来、将来の回収が見込めなくなった資産について、一定の会計ルールに基づき、適切な時期に損失として計上する処理のことをいう。それにもかかわらず、減損処理が求められるタイミングで恣意的な判断が働き、巨額の損失が先送りされてきた可能性があるというのだ。
それでは、適切に減損処理が行われなかった具体例には、どのような案件が含まれているのか。また、永守氏はこれらの会計処理にいかなる形で関与していたのか。次ページでは、元幹部の証言をベースに、減損先送りの背景と、そうした会計処理が生まれた根本的理由に迫る。
また、不適切会計を巡る第三者委員会の調査は、どこに焦点を当てているのか。調査の「着地点」を大胆に読み解き、ニデックの経営や存続に与えるインパクトについて検証する。







