野口悠紀雄
第23回
6月の貿易収支は黒字になった。ただし、黒字額は707億円に過ぎず、なんと前年比約9割減の著しい減少ぶりだ。貿易赤字に陥ったのは一時的で、黒字が正常だと考えている人が多いなか、今後の貿易収支はどうなるのだろうか。

第22回
復興財源を議論する場合、財源の選択が経済活動にどのような影響を与えるかは、必ずしも意識されていない。しかし、震災後の日本経済は全体として強い供給制約に束縛されているので、マクロ的条件を勘案して財源とその影響を考えねばならない。

第21回
日本の貿易収支は、大震災後に赤字化したものの、6月中旬からは黒字化の兆候がある。しかし、原油価格の下落が貿易収支好転の要因とも考えられ、今後の原油価格や発電用燃料の増加によって赤字化の可能性がある。では、今後の日本の貿易収支はどうなるだろうか。

第20回
震災で自動車生産のサプライチェーンが損傷したために自動車輸出が落ち込み、日本の貿易収支は赤字になった。ただし、サプライチェーンが秋頃に回復するという予測に伴って日本経済の回復を期待する向きが多い。しかし、本当にそうなるだろうか?

第19回
震災翌月である2011年4月の輸出総額は、前年より12.4%も減少した。品目別に見ると、なかでも乗用車は67.9%減と非常に大きな落ち込みを見せている。乗用車輸出は、なぜ他に突出して落ち込んでしまったのだろうか。

第18回
経済危機後の貿易収支改善をもたらした要因の1つは、対中国輸出の増加である。ただし、「中国に対する輸出が、今後の日本経済を支える」とは必ずしも言えない。なぜなら、輸出量が中国経済の成長に見合って増加しているとは言えないからだ。

第6回(最終回)
補論:総需要・総供給モデルによる復興過程の分析
野口教授の最新刊『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第1章の全文を順次掲載。最終回の今回は、復興投資が金利や為替相場、物価にどのような影響を与えるかを「IS-LMモデル」と「総需要・総供給モデル」を使って分析する。

第17回
日本は、組立型製造業の輸出輸入比率が低下している反面、鉄鋼などの原料型産業の輸出・輸入比率は上昇している。現在、原子力から火力発電へのシフトにより鉱物性燃料の輸入増加が不可避だが、そのなかで貿易構造はどう変化すべきだろうか。

第5回
5.これまでの経済ショックとの違い
野口教授の最新刊『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第1章の全文を順次掲載。第5回目の今回は、東日本大震災が経済活動に及ぼした影響を、世界経済危機や阪神大震災など、過去の経済ショックと比較する。

第16回
自動車の輸出激減と原油やLNGの輸入増加によって、4月の貿易収支は赤字となった。また、中長期的には生産活動の海外比率が高くなることが考えられる。それは、日本の貿易赤字をさらに拡大させるが、この傾向をどう評価すべきだろうか。

第4回
4.円高も増税も拒否すればインフレになる
野口教授の最新刊『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第1章の全文を順次掲載。第4回目の今回は、マクロ経済の需給バランスの観点から、これから本格化する復興投資にどう対応すべきかを論じる。

第15回
5月30日に公表された5月上旬の貿易赤字は6464億円となった。日本の貿易構造が東日本大震災によって大きく変わったことをこの数字は示している。貿易収支の赤字は今後どの程度の期間にわたって継続し、どの程度の規模になるのだろうか?

第3回
3.投資が増えるのに生産を拡大できない
野口教授の最新刊『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第1章の全文を順次掲載。大震災によって厳しい供給制約に陥った日本経済。真の復興に向けて、この問題をどう捉えるべきか。今回は、電力制約があらゆる経済活動のボトルネックになることを指摘する。

第14回
5月25日に発表された貿易統計によると、4月の貿易収支は4637億円の赤字となった。この状況に対して、「貿易収支の赤字が景気の足を引っ張る」という意見が見られる。しかし、この評価は誤りである。

第2回
2.きわめて深刻な電力制約
野口教授の緊急出版書『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第2章の全文を順次掲載。この第2回では、大震災がもたらした供給制約の中でもとくに深刻な電力制約について論じる。

第13回
復興投資が増加するなかで懸念されるのが金利の上昇だ。貿易収支の大幅な悪化が起きれば、金利上昇を回避することはできるが、そのためにも日本は「貿易立国」からの脱皮を模索する必要がある。

第1回
1.今後の経済制約は、供給面にある
野口教授の最新刊『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)の第1章全文を6回にわたって紹介。この第1回目は、日本経済を束縛する条件が「需要不足」から「供給制約」へと一変したことで、これから本格化する復興投資が金利上昇と円高をもたらすことを指摘する。

第12回
今年の秋ごろから復興投資が増加するなかで懸念されるのは金利の上昇である。それにも関わらず、「そうした事態は生じない」という意見が多いのだが、これらの議論はいずれも誤りである。今回は、その理由を述べていきたい。

第11回
今後の日本経済の活動水準を規定するのは、需要面の要因ではなく、供給面の要因である。需要面では、復興投資が今秋ごろから本格化することは間違いない。問題は需要拡大に応じて電力が供給され、生産が拡大できるかどうかである。

第10回
東日本は電力制約が厳しい一方、西日本に制約はない。だから復興の過程で、電力多使用産業が西に移り、省電力型産業が東に移れば電力不足はかなり緩和される。従って、東北の工場は西日本に再建し、東日本にはサービスを誘致するのが合理的だ。
