
野口悠紀雄
第7回
これまで電気料金を引き上げて、夏の電力需要を抑制すべしとの提案を行なってきたが、東京電力はホームメージで個人契約者について「契約アンペアの変更は受付をおこなっていない」との通告。そこで考えられるのは、電気料金への課税方式だ。

第6回
新聞報道によれば、政府は夏の電力不足解消のため、業界ごとの「節電の自主行動計画」や「輪番休止」導入の準備を始めた。一見これは計画停電方式の不都合を取り除いた望ましい方式のように見える。しかし、ここには経済運営の基幹に関わる重大な問題が隠されている。

第5回
電力不足問題を考える際、もはや「電力利用のコストが何らかの形で上がること自体は、絶対に不可避」である。これから検討すべき問題は、「どのような形で利用コスト上昇を実現するか」だ。

第4回
電力需要の抑制のためには、家庭を対象とするだけでは十分でない。全体の需要の中で家庭は3分の1ほどの比重しか占めていないので、法人の需要抑制が重要な課題だ。そこで、今回は法人需要の問題について考えることとする。

第3回
計画停電は当面4月いっぱい続くとされているが、今年の夏の大幅な供給不足は不可避と考えて、いまから対策を考えるべきである。この状況に対して、電気の基本料金見直しはどの程度の貢献をなしうるだろうか?

第2回
現在も続く計画停電に対し、先日「電力需要抑制のために価格メカニズムの活用を」という緊急提言を行なったが、それに対して「各家庭の基本料金を40A以上は5倍程度に値上げする」という優れた提案をいただいた。今回はその意義を検討したい。

第1回
東北関東大震災による電力供給能力の低下を受けて、東京電力の計画停電が実施されている。そこで電力需要削減のため、計画停電に加え、臨時的な料金の引き上げ、または電力使用に対する臨時的な課税を提案したい。

第21回
国債費として支出される額の多くは、国債で吸収して国庫に戻すことが可能だ。それは国債の償還費や利払いのほとんどが国内の国債保有者に対するものだからである。したがって国債費に関する財政赤字の問題は、国内の適切な対処で克服できる。

第20回
90年代後半以降の日本の財政は、人口構造の変化に伴い社会保障支出が増えたために拡大した。それに対して新しい財源を用意する必要があったが、税収増にはつながらなかった。そこでそれを賄うために国債が発行され続けていったのである。

第19回
今回は、前回までに引き続き、マニフェスト関連経費や国債費といった一般会計の今後について検討する。マニフェスト関連経費は、一般会計国費で合計3.6兆円で、2009年度の国家公務員相人件費の68%。これほどの無駄遣いは考えられない。

第18回
消費税率を5%引き上げる程度の増税では、すぐに歳出増に飲み込まれてしまう。だから、歳出構造の見直しがどうしても必要である。しかし、どこに問題の根本があるかは、必ずしも正確に把握されていない。

第17回
しばしば、「日本の消費税率はヨーロッパの付加価値税率に比べると低いから、増税の余地がある」と言われる。しかしだからと言って、「消費税率を引き上げれば日本の財政赤字問題は解決」とは言えない状態にまで危機は迫っている。

第16回
米格付け会社S&Pが、日本の長期国債の格付けを引き下げた。他方、菅直人内閣は、6月をめどに財政再建についての方向付けを示すとしている。ただ、仮に消費税率5%引き上げを決定したとしても、財政改善効果はわずかでしかない。

第15回
少子化による総人口の減少が、日本経済停滞の原因であると言われるが、あまり明確な関係が見られない。むしろ大きな影響を与えているのは、40-59歳層の人口動向だ。しかし日本は、この人口構造の変化に経済構造が対応できていない。

第14回
しばしば、「少子高齢化のために、国内市場が縮小するので問題だ」と言われる。自動車や家電製品、住宅については確かにそのとおりだが、すべての財やサービスに対する需要が、高齢化によって減少するわけではない。

第13回
菅直人首相は年頭の記者会見で「社会保障の財源確保のため、消費税を含む税制改革を議論しなければならない」と述べた。これは問題が把握され始めた意味で歓迎したいが、重要なのは「問題は何か、どの程度難しいものか」を認識することだ。

第12回
日本の国債発行は今後10年程度で行き詰まるであろうと以前推計した。その背景にあるのが人口高齢化に伴う社会保障給付増大だが、税負担を社会保障給付の増加率を上回る率で引き上げるのは困難であり、財政破綻は推計より早く生じる可能性がある。

第11回
「貸付を減らすことによって国債を購入する」というメカニズムは、異常なものだが、これまで大きな問題を引き起こすことはなかった。それは企業の資金需要が低水準のままであったからだ。では、世界終焉の日は、いつ到来するのだろうか。

第10回
「国債が増えても、その消化に問題はない」とする考えがある。その根拠として言われるのが、「日本には1500兆円を超える個人金融資産があるから大丈夫」などといった考えだ。しかし、この考えは誤りである。

第9回
高齢化に伴って、資産の運用が重要な課題となる。労働して勤労所得を得ることよりも、それまで蓄積してきた資産を適切に運用して財産所得を得ることのほうが重要な課題になるのだ。これは、個々の家計にとっても、国全体にとっても言える。
