5月10日、菅直人内閣総理大臣は、2010年6月に策定された現在の「エネルギー基本計画」の見直しを表明した。

 そこでの焦点は脱原発だ。計画では、発電に占める原子力の比率を2030年に53%に高めるために、14基の原発を増設することを想定していた。これを見直すとなれば、計画の基本的な変更が必要になる。

 7月12日、衆院東日本大震災復興特別委員会で、菅総理大臣は、エネルギー基本計画を「白紙撤回し、原子力への依存度は下げざるを得ない」と重ねて明言し、エネルギー政策の全体像について「そう遠くない時期に政府として示したい」として、新たな基本計画を提示する考えを示した。

 この問題についてこれまで行なわれてきた議論は、再生可能エネルギーの拡大に焦点をあてたものが多い。それが重要な論点であることは事実だ。しかし、この問題は、再生エネルギーが新ビジネスにつながることから、やや誇張されている感がないとも言えない。

 再生エネルギーは、コストや供給の安定性などの点で問題があることはよく知られている。したがって、これだけに頼って脱原発をはかるのは、現実にはかなり困難だ。

 では、脱原発は不可能かといえば、そうではない。論点はそれだけではないからだ。とくに、需要面の検討が重要である。

 一般に、長期的エネルギー問題は、供給面を中心に議論されることが多い。「エネルギー基本計画」においても、議論されているのは、自給率や電源構成、温暖化ガス排出量などだ。

 その半面で、需要面の問題が詳細に議論されることは少ない。多くの議論は、需要があまり減らないことを大前提として考えている。

 経済産業省の「長期エネルギー需給見通し」では、下記のように需要面が検討されている。しかし、そこでは、「効率化」が中心テーマだ。効率化の前に、経済活動水準との関係での需要総量の検討が必要である。

 以下で示すように、需要を含めたさまざまな側面を見直すことによって、再生エネルギーだけに頼らず脱原発を達成することは、不可能ではない。