4月の貿易収支は赤字となったが、これをもたらした主たる原因は、自動車の輸出が激減し、他方で原油とLNG(液化天然ガス)の輸入が増加したことである。

 今後の見通しについては、前回述べた。その結論は、

1.自動車輸出は今年いっぱいくらいには回復するだろう。
2.しかし、原油とLNGの輸入は減らないだろう。

 ということであった。

 したがって、貿易赤字は短期間で克服できる問題ではなく、今後かなりの期間にわたって継続する可能性が高い。1980年代以降、日本の貿易収支が年間を通じて赤字だったことはないので、大きな変化が日本経済に起きたことがわかる。

 東日本大震災によって生じた経済条件の変化を考えると、「原油やLNGを大量に輸入して工業製品を輸出するという貿易のパターンを、今後も続けてよいのか?」という疑問が発生する。

 中長期的な観点からもう一つ重要なことは、生産活動のうち、海外で行なわれる比率が高くなることである。それは、日本の貿易収支の赤字をさらに拡大する方向に働くが、この傾向をどう評価すべきだろうか?

 これらはいずれも、日本の産業構造と密接にかかわる問題である。この問題について考えるために、まず、過去の貿易構造がどのように変化してきたかを概観することとしよう。

電気機器と半導体では
輸出・輸入比率が顕著に低下

 日本製造業の国内生産比率の低下は、いくつかの分野ですでに生じている。とりわけ顕著なのが、電気機器やエレクトロニクスの分野だ。

 【図表1】には、電気機器と半導体についての輸出・輸入比率を示す。

 電気機器の場合、80年代には輸出が輸入の6~8倍程度あった。しかし、90年代の前半にこの比率が急低下し、90年代の中頃には3倍を下回るようになった。2011年2月には、輸出と輸入の比率は1.2倍程度まで低下した。

 半導体においても同様の傾向が見られる。80年代には輸出・輸入比は5~6程度であった。しかし、90年代初めに4程度に急低下し、90年代の中頃には2.5程度になった。現在では2程度である。