電力需要は、経済活動水準とその内容に大きく依存する。ところが、前回述べたように、「エネルギー基本計画」(および、その基礎となっていると考えられる「長期エネルギー需給見通し」)における経済成長率の見通しは、過大であると考えられる。

 これらを補正すれば、将来時点における電力需要は、かなり減るはずだ。したがって、再生可能エネルギーに過度に依存することなく、脱原発(あるいは、原子力発電に対する過度の依存からの脱却)を実現できるはずである。

経済成長と電力需要

 では、経済成長に伴う電力使用量の増加はどのようなものだったか?

 【図表1】には、1980年度以降の実質GDP(国内総生産)と電力使用量の推移を示した。いずれも、80年度の値を1とする指数で示してある(ここで、電力使用量とは、「電灯」と「電力」の合計である。2000年度以降は、それまで「電力」として示されていたものが、「電力」と「特定規模需要」に分類されている)。

 この図から分かるように、電力使用はほぼGDPに比例する形で伸びている。

 【図表2】には、電力使用量の伸び率と実質GDPの伸び率との比を示した。いくつかの例外年度はあるが、多くの年において、これは1近辺の値になっている(注)。ただし、2001年度以降は、2近い値になっている年も多い。

 細かい計算をする前に、以下の検討の大まかなロジックを述べれば、つぎのとおりだ。

 仮にGDPの年率成長率が1%下がれば、20年後のGDPは2割以上減少する。上で見たように電力需要はGDPの成長とほぼ同率で増加しているので、GDPが見込みより2割減少すれば、電力需要も2割程度減少する可能性が強い。

「エネルギー基本計画」では、20年後の2030年における原子力発電は総電力の5割程度と想定されているのだが、仮に総電力需要が2割減れば、原子力による発電を半分程度に落とすことが可能なわけだ。これに加えて火力発電を増強すれば、脱原発を実現できる(ただし、環境基準は達成できない可能性がある)。

 そこで最初に、経済成長率の想定の違いが、2030年におけるGDPの水準にどの程度の影響を与えるかを見ておこう。