2011.2.4
改善効果わずか2年!消費税を5%引き上げても、財政状況は悪化する
米格付け会社S&Pが、日本の長期国債の格付けを引き下げた。他方、菅直人内閣は、6月をめどに財政再建についての方向付けを示すとしている。ただ、仮に消費税率5%引き上げを決定したとしても、財政改善効果はわずかでしかない。
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『1940年体制―さらば戦時経済』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』『仮想通貨革命』『ブロックチェーン革命』など。近著に『中国が世界を攪乱する』『経験なき経済危機』『書くことについて』『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』『「超」英語独学法』などがある。野口悠紀雄ホームページ
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2011.2.4
米格付け会社S&Pが、日本の長期国債の格付けを引き下げた。他方、菅直人内閣は、6月をめどに財政再建についての方向付けを示すとしている。ただ、仮に消費税率5%引き上げを決定したとしても、財政改善効果はわずかでしかない。
2011.1.28
少子化による総人口の減少が、日本経済停滞の原因であると言われるが、あまり明確な関係が見られない。むしろ大きな影響を与えているのは、40-59歳層の人口動向だ。しかし日本は、この人口構造の変化に経済構造が対応できていない。
2011.1.21
しばしば、「少子高齢化のために、国内市場が縮小するので問題だ」と言われる。自動車や家電製品、住宅については確かにそのとおりだが、すべての財やサービスに対する需要が、高齢化によって減少するわけではない。
2011.1.14
菅直人首相は年頭の記者会見で「社会保障の財源確保のため、消費税を含む税制改革を議論しなければならない」と述べた。これは問題が把握され始めた意味で歓迎したいが、重要なのは「問題は何か、どの程度難しいものか」を認識することだ。
2011.1.7
日本の国債発行は今後10年程度で行き詰まるであろうと以前推計した。その背景にあるのが人口高齢化に伴う社会保障給付増大だが、税負担を社会保障給付の増加率を上回る率で引き上げるのは困難であり、財政破綻は推計より早く生じる可能性がある。
2010.12.24
「貸付を減らすことによって国債を購入する」というメカニズムは、異常なものだが、これまで大きな問題を引き起こすことはなかった。それは企業の資金需要が低水準のままであったからだ。では、世界終焉の日は、いつ到来するのだろうか。
2010.12.17
「国債が増えても、その消化に問題はない」とする考えがある。その根拠として言われるのが、「日本には1500兆円を超える個人金融資産があるから大丈夫」などといった考えだ。しかし、この考えは誤りである。
2010.12.10
高齢化に伴って、資産の運用が重要な課題となる。労働して勤労所得を得ることよりも、それまで蓄積してきた資産を適切に運用して財産所得を得ることのほうが重要な課題になるのだ。これは、個々の家計にとっても、国全体にとっても言える。
2010.12.3
80年代以降の推移からわかるように、国内の投資が貯蓄を超えれば経常収支は赤字に、貯蓄が投資を超えれば経常収支は黒字になる。だが、「貯蓄-投資=輸出-輸入」は、事後的な恒等関係であって、因果関係ではないことに注意が必要だ。
2010.11.26
金融緩和の本来の目的は、企業投資の増大である。しかし、日本で実際に起こったのはそうしたことではない。ネットの債務部門(企業と政府)の支払利子が減少し、家計の受取利子が減少するという所得移転であった。
2010.11.19
財政赤字が拡大していることはよく知られているのだが、それを引き起こした要因については誤解が多い。「景気刺激のために公共投資を増やしたために赤字が拡大した」と言われることが多いのだが、そうではないことに注意が必要だ。
2010.11.12
家計部門の貯蓄は、97年度には35.7兆円であったものが、07年度には6.3兆円と、約6分の1程度にまで減少した。額では29.4兆円の減少だ。この結果、貯蓄率が大きく下落したのである。なぜ貯蓄はこのように大きく減少したのだろうか?
2010.11.5
国民経済計算における家計貯蓄率は、1981年の18%超から2008年の2.3%まで、顕著に下落した。では、家計黒字率の変化は、人口の年齢構成の変化とどのような関係があるのだろうか?
2010.10.29
人口要因が経済活動に大きな影響を与えるのは間違いないが、それだけですべて予測できるわけではない。それは、人口的要因が貯蓄率や資産保有状況に与える影響はかなり顕著だが、資産運用は市場条件にも大きく依存することからもわかる。
2010.10.22
近年、「家計貯蓄率が低下した」とよく言われることがある。しかし、それは国民経済計算における貯蓄率であり、「所得のうち消費に回さない分」という日常的な感覚の「貯蓄率」は、それほど低下したわけではないことに注意すべきだ。
2010.10.15
人口構造の変化と経済パフォーマンスとの関連が、注目を集めている。最近では、日本経済の長期的な不調は、人口減少と密接に結びついているという議論がなされている。
2010.9.25
我が国の年金財政の逼迫は、高齢化が予想を超えて進展したために生じたと思われがちだが、そうではない。「20%の保険料率が必要な制度を4%で運営できる」と誤解して、制度が設計されたことしまったことに基本的な原因があるのだ。
2010.9.18
しばしば「高齢化の進展が年金財政を悪化させた」といわれるが、積立方式の場合、相対的高齢化(世代別人口数の相対的な変化)は年金財政に無関係だ。現在の保険料は60年代末のほぼ3倍だが、これは人口構造の見込み違いでは説明がつかない。
2010.9.11
日本の人口構造が大きな問題を抱えているのは間違いない事実であり、年金をめぐる議論は、「人口高齢化が進めば年金財政は悪化する」ということを自明の理として受け入れている。しかし、それは、自明の理ではない。
2010.9.4
給与所得だけを対象とする在職老齢年金制度は、公平の原則に反する。高齢者の労働市場をゆがめ、さらに所得の種類によって大きな格差が存在することは非常に大きな問題だ。
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