本連載の第25回で、エネルギー需給見通しの見直しを行ない、再生可能エネルギーに依存することなく脱原発が可能であることを示した。しかし、ここで行なったのは、単純な表の組み直し作業である。そこでの問題点は、環境基準(CO2発生量)の達成ができないことであった。
第26回、27回では、電力需要は経済成長と密接にかかわっていること、「エネルギー基本計画」における成長率の見通しは過大であることを述べた。したがって、今後の成長率を現実的なものに見直せば、再生可能エネルギーに過度に依存することなく、また環境基準も達成しつつ、脱原発を実現する可能性があると考えられる。
このことを定量的に分析するため、第27回において、電力需要を分析するためのモデルを示した。このモデルの目的は、製造業、非製造業、家庭の電力需要を区別して考えるためのものである。
過去のデータを見ると、つぎのような傾向が観測される。
a.電力需要総量は、GDP(国内総生産)とほぼ同率で成長した。
b.製造業の比率が低下し、非製造業と家庭の比率が上昇した。つまり、経済成長に対する弾力性は、製造業では1より小、非製造業と家庭は1より大であった。
c.付加価値1単位当たりで見ると、製造業の電力使用量は非製造業のそれより大きい。つまり、製造業は「電力多使用産業」である。
将来の部門別電力使用
以上を考慮すると、将来を見る場合、全体としての経済成長率の想定だけでなく、産業構造、とくに製造業の比率変化に関する想定が重要であることが分かる。また、非製造業と家庭のこれまでの高い弾力性が今後も継続するかどうかの検討も必要である。