「低コストの労働力を提供する国」から抜け出しつつある中国・深センは、ほかにないアイデア・製品を生み出すことを求められている。オリジナルのアイデアを「世界の工場」深センで製品化するために世界から集まった才能との交流で刺激された若者たちが、政府を巻き込んで巨大なムーブメントを作りつつある。(高須正和 メイカーフェア深セン/シンガポール)
二番煎じではない
創造性やオリジナリティ
世界的なDIYのイベント「メイカーフェア」の深セン版が、2017年11月10~12日、深セン職業技術学院(Shenzhen Polytechnic University)にて開催された。
筆者はアジアのメイカーフェアに世界でもっとも多く参加している。その目で他国のメイカーフェアと比べてみると、中国のメイカーフェアは、売れそうなにおいのする(多くは二番煎じの)製品を起業した若者が出展する性質が強く、「自分が作りたいから作った」という創造性やオリジナリティにあふれるものはあまり見ないとこれまで感じていた。以前、本連載「深センの電機ショー、最先端からパクリまでのカオスな面白さ」レポートで紹介した産業見本市とメイカーフェアがあまり変わらないような感じだ。しかし、今回のメイカーフェア深セン2017は、それが変わる予兆を感じた。
大注目を集めていたのは上写真の「水上漂」という、水の上を歩くという新しいスポーツのための用具。宝華という発明家であり起業家が展示していた。
櫛のように配置された板は、水に沈むときには一枚の板のようになって抵抗が大きくなり、水から上げるときには倒れて抵抗が小さくなる。浮力があるわけでなく沈みにくくしているだけなので、多少抵抗があっても、数秒で結局は沈むのだが、この機構により「沈むのには数秒かかり、上げるのは一瞬」という状態を作っている。なので、右足が沈む前に左足を引き上げて前に出し、左足が沈む前に右足を前に出す…という行為を続けていれば水の上を歩くことができる。