役員報酬1億円は高い?それとも安い?

 1億円以上の報酬を得ている上場企業の役員は、有価証券報告書でその事実を開示する義務があり、現在、その数は約500人と言われている。下世話なことだが、報酬の話は社員の間でもっとも盛り上がる話題となる。

「え~、あの人が1億円???」「なぜそんなにもらえるの?」「社長におべんちゃらを言ってお手盛りしてもらっているのではないの?」などといったものだ。

 しかし、優良といわれる上場企業の役員の報酬の算出方式は、会社ごとにだいたい決まっている。固定部分が多い企業もあれば、利益額とのリンクで支払われるボーナスが多い企業もある。現金主体の会社もあれば、株式報酬の比率が高い会社もある。最近は、報酬の透明性を高めるための報酬委員会の設置も一般化してきた。

 ところで1億円の報酬というのは、高いのだろうか。はたまた安いのだろうか。上場企業であれば、普通の管理職でも年収1000万円に達することもあるから、その約10倍である。それだけ払う価値はあるのだろうか?

報酬額を決める「職責」と「能力」
“能力”を見るから1億に納得できない

 報酬の決定方法には、大きく2つパターンがある。1つは「職責の重さ」に応じて。もう1つは、その人の「能力」に応じて支払われる方法だ。一般社員の給与も、職務のグレード(職務等級)か職能資格に応じて支払われるから、それに準じて考えればイメージしやすいかもしれない。

「職責」で役員報酬を見ると、1億円は高くないと感じるのではないだろうか。例えば、それなりに大きい上場企業の専務や常務クラスになると、部下が1000人、2000人いるのも当たり前。その人がGOと言うかNGと言うかの意思決定が会社の業績に与える影響や責任は大きい。

 また、未来への方向付けを正しく行えるかどうかは極めて重要だ。スピーチ一つにしても、巧みに行うか、下手かで社員数千人のやる気に影響を与える。ステイクホルダーとの関係性を上手に保ち、支援を取りつけられるかも重要だ。こうした数々の仕事の職責や影響力の大きさを考えれば、普通の管理職が抱えている職責の10倍などというものではないだろう。そう考えれば1億円が高いとはいえない。